年越師匠

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「原稿用紙の整理、終わりましたよ」 と束ねた原稿用紙を両手に提げた白井さんが食堂に入って来られました。 「お疲れ様」 先生はニコニコと笑いながら白井さんに仰られました。 白井さんは先生の手に巻かれた包帯を見て、提げた原稿用紙を床に落とされました。 「せ、先生、どうされたんですか」 白井さんは慌てて先生に歩み寄られます。 「ああ、ちょっと捻ってしまってね。張り切って餅搗きに参加してしまったモンで」 先生は煙草を持った左手を振り回す様にして説明しておられました。 「先生…」 白井さんは椅子を引き寄せ、先生の傍で座られます。 「これじゃ原稿が書けないじゃないですか…」 白井さんは先生の右手を掴まれました。
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