9人が本棚に入れています
本棚に追加
「痛い、痛いよ、白井君」
その声に我に返り、白井さんは先生の手を離されました。
「心配するな。三が日、安静してたら治る」
「三が日って…」
白井さんは呟く様に仰られました。
「今日中に戴ける原稿はどうするんです。左手じゃ書けないじゃないですか」
白井さんは興奮してまた先生の右手を掴まれました。
「だから痛いって…」
先生は煙草を消して、白井さんの手を掴まれました。
「白井君は私の心配をしてくれてるのかね。それとも原稿の心配かね」
先生は白井さんを睨む様に見ておられました。
白井さんは口をモゴモゴさせて、
「も、勿論先生の心配ですよ」
と仰り、座り直されました。
最初のコメントを投稿しよう!