年越師匠

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私も雑巾をバケツに入れて洗いながら、庭でいつもと違う様子にはしゃぐシズカを見て微笑んでおりました。 白井さんと同じ様にズボンの裾を捲り上げた先生が出て来られ、 「昼飯にしようか。どちらか、悪いが昼飯を買って来てくれないか」 と私と白井さんに仰られます。 白井さんは手を真っ直ぐに挙げられ、 「私が行って参ります」 と、立候補されました。 相当に掃除が嫌なのでしょう。 「鰻ですか、天重とか…牛飯も良いですね」 白井さんは捲ったズボンの裾を下ろしながらブツブツと言っておられますが、その様子を見た先生は、私の方を見て呆れておられました。 「何でも良い。早く一刻も早く食える店で頼む。この調子では年内に掃除が終わらん」 先生はそう言ってまた風呂場へと戻って行かれました。 白井さんはその後靴下を履くと直ぐに玄関から飛び出して行かれました。
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