年越師匠

とにかく皆、お腹が空いていた様子で、美味しい鰻重も一気に食べ終えました。

希世さんは空になったお重を下げられると、

「珈琲をお淹れしますね」

と厨へと行かれました。

「とりあえず、一通り掃除は終わりかな」

先生は煙草を吞みながら仰られました。

「私の方は、自分の部屋の掃除だけですね」

先生は頷き、煙を吐いておられました。

「私は先生に原稿を戴くだけですね」

白井さんは先生の方を見て、微笑んでおられますが、それは叶わない事なのかもしれません。