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 母は月の初め頃になると、家の机の上に1万円を置いていく。 「これで飯を食え」という意味なんだと思う。 ポケットに手を突っ込むと、中にあった1万円札を取り出した。 先月は2万置いてあったので、先月分の1万が余ったのだ。 「今日は何を買おう」 菓子パンか、おにぎりか、はたまた弁当か。 そんな事を悩みながら街の中を歩いていくと、ふとある店が目にとまった。 「ケーキ屋…」 1度だけ、食べた事がある。 ふわふわの生クリームが沢山詰まったショートケーキ。 小学3年生のときに、友達の家に遊びに行くとその子の母親が出してくれた。 初めて食べたケーキに感動したのを覚えている。 クリスマスシーズンということもあって、店には多くの客と、ホールのショートケーキがケースの中にずらりと並んでいる。 また食べたい、そんな思いが頭の中をよぎった。 「!………」 店から出てきた家族は、すごく幸せそうだ。 その場で俯く私を横目に、「幸せな家族」は通り過ぎて行く。 (虚しくなるだけじゃないか…) キラキラとした街の街灯が眩しくて、頭痛がする。 行き交う人のはしゃぎ声、笑い声に吐き気すら覚える。
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