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声は時々唸り声を上げている。 声に近づくにつれて心臓の音が大きくなり、今にも飛び出していきそうだ。 「ふぅ……ふぅ…………………」 何度も心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返すがそれほど効果は感じられない。 「や…やめてくれ……っ」 声はもう目の前。 (この角から見えるかな…) 目の前に曲がり角がある、その死角を使って声のする方を何とか見ようとそっと顔をのりだした。 目に映るのは2人の男。 1人は腕を抑えて座り込んでいる。 もう1人はそんな男を嘲笑うかのようにして座り込む男の目の前に立っていた。 「や…やめてくれっ!なんなんだっ!?何が目的だ!!!」 座り込む男は声や見た目から40後半〜50前半の男のように見える。 一方不気味な笑みを浮かべて立つ男は20代前半の男だった。 「誰の命令だ!!俺を誰だと思っている!!!」 「はぁ……すみませんが、貴方が誰とか私には関係ないことです」 若い男が笑みを浮かべながら淡々と話し始めた。 「私は上の命令でただと命じられただけなので………」 細くて鋭い目がそっと開かれた。 真っ赤な赤い目、少し離れている私が見ても鋭くて恐ろしい。 「ひぃっ………わ、わかった!い、いっいくらだ!?いくら出せばいい!?いくらでも出してやる!!!」 男がそばにあったスーツケースに手を取り、震える手でそれを開けた。 バサッと音と共に舞う諭吉。 スーツケースいっぱいに詰め込まれた札が放たれたように舞散った。 「こ、これを全部やる!足りなければ準備する!!」 見たことも無い大金に私は後ずさりした。
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