第1章 再会

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第1章 再会

 (今日は何だかおかしな日だった…) 家に帰ると、玄関に赤いヒールが雑に脱ぎ捨てられていた。 ドクンと心臓が跳ね上がる。 母だ。 ヒールのそばに大きな男物の革靴もある。 父のではない、知らない誰かの。 (また、男を連れ込んだのか) 母が家に帰ってくるのは、大抵男を連れ込んだ時か何か必要なものを取りに来た時。 何か必要なものを取りに来た時は数分で出ていくが、男を連れ込んだ日はそうもいかない。 そういう日は私はその場にいるのが嫌で 相手が帰るまで外で暇を潰す。 (今日はネットカフェにでも行こう…) そう思って脱ぎかけた靴をもう一度履き直そうとかがんだ時だった。 「ジャアァ…」 トイレを、流す音と共に扉が開いた。 「お?…あんた瑠衣(るい)の子供か?」 上半身裸の男がタオルで髪を拭きながら、こちらに近づいてきた。 「あ…は、はい…」 最悪なタイミングだ。 (どうしよう、) 「じゃ…じゃあ、私はこれで…」 そう言って、半ば急ぎめに玄関のドアノブに手をかけた瞬間───── 「まぁ、そんな急いで出ていこうとしなくてもいいって」 開きかけたドアを男が即座に閉め、私を逃がすまいと両手を私の両サイドについている。
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