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彼女はカウンターの、悪魔的中年紳士に
目配せを送り、その先にいるマスターに
こう言った。
「マスター軽部、コーヒー。エスプレッソで」
するとマスターは。
「ウガッ」
と返事をした。
しかし、マスター、どういう訳か、紙コップにテキーラサンライズを作って入れると、ビビアンに渡した。
多分、彼女は飲んだ後、グラスを床に叩き付けて割るのが礼儀だと思っている、いかれた習慣が身に付いているのだろう。
何一つ文句も言わずに、軽部から紙コップを受けとると、グイッとイッキ飲みして。
「まずい」
と言ったのであった。
中身が何なのか分かっていないところは、
社会見学程度の知識しか、この地上で得ていない事が良く分かった。
三人の悪魔的紳士はニヤニヤ笑った。
さて、その先は?と思っていると彼女は何やら呪文を唱えた。紳士達は口々に。
「あれは?」「知らんよ」「どこの呪文だ?」「さあね」と、こそこそ話し合った。
すると、ドカーン!
と言う音はしなかったが。突然カウンター席の後ろに広がる、ホールのテーブル席を薙ぎ倒し、ホールに3メートル位の人形が跪いて現れた。
マスター軽部は
「ウガーッ!」
と壊れた椅子やテーブルを、見に行って泣いていた。すると、ビビアンは。
「ごめん、テーブルを退けてからやるんだった、ハイ」
と懐から札束を出して軽部に渡した。
一体何処から?持ってきたのか、盗んだのか?紳士達は。
「ありゃ誰の金だ?」「知らんよ」「また、盗んだのか?」「まさか、強盗から引ったくったのかもな」「あははは」
と笑いあった。
ビビアンは彼らのガヤも気にせず、おもむろに、ホールの奥を見ると。
「それでは、入札を始めます!」
と宣言した。
暗く証明の落とされたバーのホールの奥は
何人かの悪魔的人間が、テーブル席に腰かけていた。
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