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「それから?一体何があった」
ロイが聞くと、ビビアンは。
「その方が仰有ったのです」
「ああ、旨かった。見た目はともかく、かなり食材を使っているな。何処からか寄付でもあったのかい?」
「いいえ、殆んど私の資産から出しています。もう、あまりありませんが」
とビビアン、するとロイが。
「ちょっと待った!お前、人間界で、どうやって金を得た。その話だと、まだ来たばかりの頃だろう」
と聞いた。するとビビアンはニッコリ笑い。
「アルバイトをしてましたわ、夜の。
それが手っ取り早いので。でも、ご安心下さい、淫らな仕事では御座いませんから。
中華料理屋の厨房で野菜を切ったり、皿を洗ったりしてました。最近は教会に献金する人も少なく、皆やってますのよ、生活の為」
「堕ちたもんだなこの世も。早く大浄化してしまえば良いものを」
「そんな、命は限りあるものです。奪う必要はありません事よ」
と、ビビアンに正論を言われ、たじろぐロイ
ビビアンは更に話を続けた。
「その方がこう言ったのです」
「俺は昔、危うく飢え死にするところだった。親父がくそ親父でな、ギャンブルと酒に溺れて大して働かない男だった。
お袋は俺が小学生の頃、俺を置いて逃げ出した。親父は改心するかと思えば、俺に飯すら食わせなかった。俺は万引きや拾い食いで命を繋いでいた。そんな時、やっぱり何処かの炊き出しに並んでいたんだよ。
すると、先代の組長が俺に声をかけてくれた、うちに来ないかってな。
俺は久々に暖かい飯と布団で寝ることが出来た。それから必死になって、先代の仕事を覚え、手伝うようになって今に至るって訳さ。本当の親父はどこでの垂れ死んだのやら、
会うことは無かった、探しもしなかったようだがな」
「まあ、酷い、悲惨な目に会いましたね」
「だからさ、言わせてもらう。
あんたがこうやって、施しをしても、ここに来る連中は、明日また食える訳ではない。
死ぬのが少し延びただけだ。あんたも金が無くなったんだろ。どうするんだいこれから。つまりだ、金だよ金がものを言うんだ、この世の中はな」
「では、あなたが下さい」
「あはは、そこまで甘ちゃんじゃねぇよ。やっと食えるようになった。人より良い生活も出来る様になった。子分達を同じ様に食える様に、してやらなきゃならない。
だから、表向きは会社を作った。
まあ、非合法品を扱う会社だけどな、
ソレナリに儲かっている、この腐った世の中ではな」
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