消えない想い

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カタカタというキーボードの音が 重なって聞こえてくるオフィス。 画面にはカーソルがその場で 何度も点滅していた。 道隆「紘人、あの案件どうなった?」 共同経営者で友人である道隆に 急に声をかけられて ハッと我に返った。 紘人「あ、ああ・・・・あれな・・・・。」 明らかにしどろもどろな俺に 道隆がしかめっ面をして ため息をつく。 終業前だと言うのに 頼んでいた仕事が進んでないことに 苛立っているようだ。 道隆「はぁ~~。これ終わったら飲みに行くぞ。」 俺の不調に気づいたのか 道隆が飲みに誘ってくれた。 愚痴を聞いてやろうっていう スタンスはさすがだった(笑) この狩野道隆と俺は 『HⅯデザイン』の共同経営者。 広告デザインなんかやってる 社員5名ほどのちっさい会社だ。 道隆は学生のころからの友人で 数少ない俺の友人だ。 もちろん俺の双子の兄、 雅人とも友人である。 道隆「お前もめげないねぇ・・・・。」 おしゃれにブランデーの氷を転がしながら 口をつけ低い声でそう言った。 コイツの場合、 左手の薬指にに光る指輪でさえ 色気に換算されるからずるいよな。 紘人「俺だって自分がこんなに一途だなんて知らなかったよ(笑)」 道隆は俺が璃子に 想いを寄せていたことを知っている。 もちろん雅人と取合いのようになったこともすべて。 一時期それで仕事が手につかないほど へこんでいた俺を励ましてくれたのも 道隆だった。 道隆「まあ、璃子ちゃん確かにいい子だしな・・・・。」 道隆が女性を褒めるなんて滅多にないから 驚いて飲んでいたウィスキーを 喉に詰まらせ蒸せてしまった。 紘人「まさかお前も璃子の事・・・・。」 なんてことないのはよく知ってるが 念のため確認で口に出した。 道隆「怒るぞ?」 ですよね。 道隆は1年前に結婚したばかりの新婚だ。 可愛い奥さんがいる。 こんなすました顔をして 奥さんにベタ惚れで 愛情を疑われることを一番に嫌う。 道隆「忘れろなんて言わねぇから、もう少し自分をコントロールする術を身につけろよ。」 経営者として友人としての 忠告でもあった。 そんなこと俺だってわかってるよ。 。
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