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新居の計画
葵に黙って家を買ったことを叱られた香は、夏休みに入った、お店の休みの火曜日の昼間に、光と葵と、ダイニングで新居について話すことにした。
香が新居の見取図を開き、
「ここが私の寝室」
「二階のこっちの6畳が葵、反対側の6畳が光、真ん中の10畳の広い部屋がプレイルーム、いい?」
と、光と葵を交互に見ながら問いかけると、
「オッケー!今の部屋より大きくなるから嬉しい!」
と、葵は答えた。
今の葵と光の部屋は共に4.5畳だった。
「で、壁紙は決まったけど、部屋の照明とかカーテンとかどうする?」
「カタログは貰ってきたけど、お店行く?」
と香が言うと、すかさず葵が、
「行く!行く!」
「だって、私、光と出掛けた事ないんだもん!」
と、手を上げて言った。
それを聞いた香は、
「あれ? 無かった?」
と聞くと、葵は何度を首を横に振り、
「無い! 無い!!」
と答えた。
葵の話を聞いたあと、
「光、3人で出かける?」
と聞くと、光も頷いたので、初めての3人でのお出掛けとなった。
お店で選んで、休憩でカフェに入って、またお店で選んで…。
慌ただしい一日だったが、初めての三人でのお出掛けは、とても幸せな時間だった。
そしてその夜、子どもたち二人で夕飯を食べるように伝えると、香は、小林の部屋に向かった。
小林には、時々近況報告をしていた。
そして、香の考えも聞いていた。
小林の部屋に入ると、
「もう、決めたんですか?」
とすぐに香は聞かれた。
「うん、やっぱり任せていい?ダリアを」
と香が言うと、
「引っ越すって言ってたから、そろそろかな〜とは、思ってました」
と小林が答えた。
香は、以前から、ダリアを小林に託そうと思っていた。
従業員からの信頼も厚い。
ダリアは静かなお店だ。
小さめな音でジャズが流れている。
お客も静かにお店の子と会話を楽しむ人が多く、お店の子も落ち着いた子ばかりだ。
和田みたいな客は稀で、トラブルはほとんど無かった。
店内では、常に男性スタッフが動き回っていたので、セクハラなどの被害も無かった。
そして、ダリアは駅近で、下に薬局、正面にコンビニ、数分先に託児所のある、シングルマザーのお店の子にも働きやすいお店だった。
「それで、今後の香さんの予定は?」
と、小林に聞かれ、
「夫を失って、勢いでビル買っちゃって、更にお店作っちゃったから、お店潰しちゃいけないって頑張ってたけど、ダリアの集客も落ち着いてきたし、ちょっとここらでゆっくりしたいな〜って思って」
と香は答え、一呼吸して、
「葵ともね、今いい感じなの」
「葵と二人で暮らしてた時はピリピリしてたのよ、二人とも」
「どうしたらいいか、分からなかった…」
「でも、光がうちに来て、口論してもお互い認められるようになったの」
「だから、今はもっとあの子達の近くで見守りたくなっちゃって」
と続けた。
小林は、静かに香を見つめながら聞いていた。
そして、香は、
「新居にね、広い庭があるの」
「カフェを考えたとき、少し離れた所も考えたけど、ここがいいって思ったんだ」
「だから、カフェづくりをこれから頑張るよ」
と、小林に向かって微笑んだ。
「ダリアは香さんの子供と同じです」
「いつでも帰って来てくださいね」
と笑って小林も香に伝えた。
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