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描く未来
小林の家では、酔いつぶれて床で寝てしまった小林がいた。
光は、肩に抱えながらベッドへ運んだ。
小林が、
「俺…、まじで香さん好きなのかなぁ…」
と、寝ぼけながら呟いた。
光は、葵の事を考えた。
『僕は、どうなんだろう…』
と。
家族として大切なのか…。
そして、葵の気持ちも…。
ただ一つ言えるのは、失うのは怖いと言う事だ。
小林を見ながら、光はそう思っていた。
そして、窓を開けた。
夜中だからか、電気がまばらな街の景色を眺めていた。
『僕は、僕のやりたい事考えなきゃ…』
そう思い、ふと部屋の中の小林の制服が目に止まった。
『僕に何ができるか分からないけど…』
と、思いながら、今したい事が頭に浮かび、朝になって、どう説明しようか考えながら、ラグに寝転がると、そのまま寝てしまっていた。
朝、朝食を食べ終わった光は、
「相談があるんだけど…」
と、小林に切り出した。
そして、
「僕をここに置いてくれない?」
「それと、ダリアで働かせてくれない?」
と、真顔で問いかけた。
小林は、
「お前さぁ、いっちょ前に心配してくれてるのかぁ?」
と苦笑いして答えると、光は、
「それも少しあるけど、自分のこと考えてみたんだ」
「葵の事、自分のしたいこと…、考えてみても答えが出ないから、とりあえず働いてみたくて…」
と、そこまで話して、光は下を向いて黙ってしまった。
小林は腕組みして考えた。
「お前が考えてみて出した答えなら、俺も協力するしか無いな」
光が顔を上げると、ニヤッと笑う小林がいた。
「でも、住むってどういうことだ?家から通えるぞ?」
と小林に聞かれ、光は、
「葵と少し離れたほうがいいかなって…」
「それに、バイトするならこの部屋住む方が都合いいし…」
と、少し考えながら小林に伝えた。
小林は、
「ちなみにさぁ、葵の事、幸せにしたいとか思うか?」
と、気になっていた事を光に聞いた。
光は、
「守りたいし助けたい」
「でも、幸せとか分からないから…」
と、光は少し下を向きながら答えた。
小林は、明るいトーンで笑いながら、
「悪い!悪い!考えられんよなぁ〜」
といい、
「住むのも仕事も了解!ただ、葵がどうだかな〜」
と、小林は困ったような笑い顔で光を見た。
光は、
「葵とちゃんと話してくるよ」
と小林に伝えて、小林の部屋から自宅へ向かった。
光が自宅へ帰ると、香がカフェの周りのフェンスをどう作ろうか悩んでいた。
「おかえり」
と、香が優しい顔で笑いかけた。
「ただいま、ちょっと話したいんだけど、いいかなぁ?」
と、光が言いづらそうに伝えると、香は頷き、カフェの前のベンチに並んで座った。
小林の事を聞いて良いのか分からない香は、
「どうかしたの?」
と、光に問いかけた。
すると、光が、
「しばらく小林くんの所に住んで、向こうから学校通っていいかなぁ?」
と、香りに聞いてきた。
香は、予想と違う内容だったため、無言になってしまった。
そんな香を真っ直ぐに見て、
「自分がしたい事を考えたいんだ」
「葵が大事だから、失いたくないから、ちゃんと自分のしたい事を考えたいんだ」
と、光は言った。
一呼吸したあと、続けて、
「あと、働きたい」
「何ができるか分からないけど、小林君に頼んで、今の僕でも出来る仕事をやらせてもらう事も頼んだんだ」
と、光が言うと、香は泣き出してしまった。
光は、号泣に近い泣き方に、困惑してしまい、ただ黙って香が落ち着くのを待っていた。
香は、涙が落ち着くと、
「ごめんなさい…あまりに嬉しくて…」
と言い、光の顔を見て、
「ねぇ、覚えてる?」
「あなたが初めてうちに来た日…」
「あなた…、知らない人の家に行くのに言われるままだったのよ?」
「その子が今、自分の意志で気持ちを伝えてくれてる」
「どんなに嬉しいことなのか、わかる?」
と、また流れる涙を拭いながら、香は言った。
光は少し考えた。
「そうだったね…」
「でも、あの時香さんが声をかけてくれたのが、ただただ嬉しかった」
「この人と居たいとは、最初から思っていたよ」
と、光が言うと、香は涙を拭いながら、
「え!? そんなの初めて聞いた!」
「もっと早く教えてよ!」
と、光の肩を自分の肩で軽くぶつけた。
二人は座っているベンチからの景色を見つめていた。
しばらくして…、
「よし!光がしたいことしな!」
と香が言い、光に笑いかけた。
その後、香は真面目な顔で、
「ただ、約束して」
「お父さんが出所したらダリアに行くかもしれないから、その前にダリアにも小林君の部屋にも近づかないで」
と光に伝えた。
光は、無言で頷いた。
光の頷きを確認したあと、香は、
「あとは…葵かな…」
と呟くと、光が、
「葵とは、ちゃんと話すから、見守ってて」
と言うので、香は頷いた。
そして、
「あっ、カフェ手伝えないかぁ…」
と、香が呟くと、光が、
「平日は学校とダリアの手伝いで、金曜日夜から日曜日までこっちに帰ってきてカフェ作りを手伝うよ」
と言うと、香が、
「休む暇ないじゃない!」
と、首を横に振った。
そんな香を見て、
「とりあえず、夏休みまで頑張ってみて、大変だったら考えるよ」
と、光が提案すると、香は渋々頷いた。
そして、
「土日いるなら、葵も許すかな…?」
と香は、心の中で思っていた。
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