カフェの完成

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カフェの完成

 夏休み半ば、とうとうカフェが完成し、機材の搬入も終わった。  自宅の西側に建てられたカフェ。  ログハウス調の天井の高い平屋。  自宅との境として、白い木の柵で自宅を囲い、カフェの西側に北側にある公園まで続く通路を作った。  そして、カフェの公園側にある裏庭には、緑に囲まれたベンチを作り、夏暑くても南からの日差しを建物が遮る、涼しいテラス席を作った。 そしてカフェの名前は、 『アザレア』 花言葉は『愛で満たされる』 そんな穏やかな愛で包まれるようなカフェにしたいと名付けられた。  南側正面は、広い庇があり、雨の日には外で雨宿りしながら腰掛けられる木のベンチが玄関扉の両脇にあり、そのベンチの手すりが雨の日は傘掛けになるよう考えられていた。  入口扉を開け中に入ると、奥まで続く通路が真っ直ぐに伸び、正面には、天井近くの高い場所に横幅いっぱいの大きな窓があり、奥の公園の緑が借景となるため、お店に入ると一番に、その公園の緑が目に映るようになっていた。  左側には、トイレや受付カウンター、その奥に調理場があり、右側には、壁に等間隔に小窓が並び、そこには作り付けの長四角のベンチが細長く作られていて、同じ形の可動式のベンチがいくつかあり、人数によって変化させられる形になっていた。  公園に近い一番奥には、東側から西側まで一面カウンターになっていて、カウンターチェアに座っても景色が見られる場所に細長く換気できる窓があり、風が通り光溢れるカフェとなった。  香は、公園の借景を利用したカフェを作りたいと思い、それが実現できたのだ。  完成祝をしようと、香と葵は、小林や光に声をかけ、夏休み最後の火曜日のダリアの定休日に、光の祖父母やダリアの従業員、葵の友達の陽子と麻衣を招待した。  アザレアは、格別広いカフェでは無いため、大人が20人ほどの人が集まると、少し狭さが感じられたが、それでも皆が喜びお祝いのムードに、活気溢れる集まりとなった。  その中で、香は、光の祖父母と話をした。  祖父母からたくさん感謝をされ、時々光と電話で話している事を聞いた。  香は、光から聞いていなかった為、少し驚いたが、それもまた光の成長なのかな…と思い、気に留めることをやめた。  祖父母はしきりに、 「申し訳無い…」 と、香に頭を下げてばかりで、香が恐縮するほどだった。  よほど、葵が傷つけられた事が申し訳ないのか…それとも光を預けてしまって…ということなのかな…と香は思い、優しく祖母の手を両手で包み、笑みを返した。  そんな香の姿を、光も申し訳無さそうに見つめていた。
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