2回目のクリスマス

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2回目のクリスマス

 2回目の三人だけのクリスマス。  今年は、ホテルディナーを光が予約した。  外食がほとんど無かった三人は、 「たまには、リッチに食べに行っちゃう?」 と、葵が提案すると、二人も賛成した。  ただ、その後の 「じゃあ、光!プラン立ててね」 の葵の言葉に、光は頭を抱えた。  すごく悩んだ。  小林君に聞くのは禁止と言われていて、自分で考えなくてはいけなかったからだ。  そこで、光はホテルディナーがある事を調べ、ホテルを吟味し、予約したのだ。  当日、いつもよりキレイに着飾る香と葵が眩しかった。  少し遅れて小林も来た。  香は驚いたが、光が、 「小林君も家族みたいだから誘いたくて」 と言ったため、笑顔で了承した。  そして、帰宅の時、葵が、 「小林君とお母さん、別で帰って」 と言い、香の返事を待たずに、光を引っ張り近くのタクシーに乗り込んだ。 「あの二人、なんか微妙な雰囲気だよね〜?」 と葵が光に話しかけた。  光は、 「微妙な雰囲気が分からないけど…」 と困った顔で、答えた。  二人は『微妙』の意味を悩み、考えすぎて沈黙してしまった。  少しの沈黙の後、光がポケットから小さな箱を取り出し、 「クリスマスプレゼント」 と言って、葵に渡した。  葵が箱を開けると、そこには、去年もらったネックレスとお揃いのイヤリングが入っていた。 「すごくかわいい! ありがとね!」 と、葵は笑顔で光にお礼を伝えたあと、 「私からは、帰ってから渡すね」 と伝えた。  タクシーが自宅に止まり、二人は自分の部屋へと戻った。  そして、葵が部屋に戻りプレゼントを持って光の部屋へとやってきた。  プレゼントの中身は、革製の携帯ケースだった。  葵は、 「私がカバーつけていい?」 と、光に問いかけると、光は頷いた。  そんな光をみて、 「じゃあ、お風呂入ってきなよ」 「戻るまでに付け替えとくから」 と葵が伝えると、光は、 「分かった」 と一言伝え、お風呂場へと向かった。  光が出て行き閉まったドアを、葵はじっと見つめていた。  そして穏やかな年越しを過ごし、あと僅かな高校生活の中、不穏な闇が押し寄せてきた…
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