二人のその後…

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二人のその後…

 今日は、光と葵の結婚パーティ。  駅前のホテルの会場を借りて行う。  お世話になった人達皆を呼びたいと二人が言ったため、結婚式という形ではなく、二次会の様なパーティにした。  小林と香も手伝いながら、来客の招待状を出していた。  光の祖父母。  香の両親。  ダリアの従業員。  光の高校の先生とクラスメート。  葵のクラスの友達。  そして、香は航にも招待状を出していた。  光の祖父母と香の両親は、会うのが初めてだったが、この三年間の二人の思いを聞いていたので、挨拶すると同時に皆が、涙を流して喜んだ。  光のクラスの立花は、光を見ると同時に号泣して、光に抱きついた。  クラスの仲間皆が、それを笑い、泣いて喜んだ。  卒業式に会えず、皆が『何か出来たのでは…』と、自問自答した日を思い返しながら、今光の笑顔を見ることが出来た事が、本当に嬉しかった。  葵の友達の陽子や麻衣、そしてクラスの子たちも、卒業式の無理して笑う葵の笑顔を忘れられずにいた。  そんな中、やっと心からの葵の笑顔を見られて、皆が、喜んだ。  ダリアの従業員たちも、初めてお店に来た光の姿を皆知っているので、バイトを始めた姿、悩んでる姿、そして父親との事件…、走馬灯のように、色んな光が思い浮かびながらも、目の前の笑顔で皆と話す光に、泣いてしまう人もいた。  そんな幸せな時間の中で、香は、ふと、入口付近に航がいる事に気付いた。  香が駆け寄る。 「元気だった?」 と、声をかけると、航は笑顔で、 「元気でしたよ!」 「今仕事ジムトレーナーやってるんすよ」 と答えた。  充実しているように見えるその笑顔に、香はホッとした。  葵が航に気づいた。 「あ〜!航君!会いたかったぁ!」 と、航に抱きつくと、光が無言で二人に近づき、 「…僕も」 といって、抱き合う二人に抱きついた。 「お前ら、目立つだろうが!」 と、航は言いながらも、嬉しそうだ。  小林も近づいた。 「…元気だったか?」  小林がそう聞くと、葵と光は目配せをして、その場から離れた。 「元気だったよ」 「父親ともさ、何回か殴り合いになりそうだったけど、俺の生き方、認めてもらえた」 と言って、航は笑った。 「香さんとは…進展無さそうだなぁ」 と、航がニヤッと笑うと、 「俺らは、このままでいいかもって感じだな」 と、小林も同じようにニヤッと笑った。 「お互い、別々の道、頑張ろうや」 と、航が言って、二人は握手をして別れた。  パーティが終わった会場で、香と小林が二人で話していた。 「航くんとは話せたの?」 と、香が聞くと、 「…気になる?」 と、小林は微笑みながら問いかけた。 「やり直すのも、ありだと思うよ?」 と、香は真顔で小林に伝えた。  香は、ずっと二人が別れたことが自分のせいだと気にしていた。  落ち着いたら、きっとまた恋しくなるだろうと、思っていた。 「あいつとは、もう無いです」  小林が真顔で香に伝えた。  見つめ合う二人。  小林が先に目をそらし、 「とにかく今は、光と葵が危なっかしいから、見守るのが一番大事です」 と、笑った。  香も、 「確かに、そうね」 と言って、笑った。  小林は、心の中で 『香さんのそばに居られたら、俺はそれでいいです』 そう、思っていた。  一方、葵と光は… 「私さぁ、気付いた事があるんだけど…」 と、光に言うと、光が葵の顔を見た。 「うちら…キスもしてないのに結婚ってありえなくない?」 「今更だけど…」 と、真顔で葵は呟いた。  二人の間に沈黙が流れた。  光が、おもむろに口を開いた。 「キスしてから結婚なの?」 と…。 「………」  誰に聞けばいいのか分からない問題に、二人はすごく考えた。 「まぁ、幸せならそれでいいかぁ」 と葵が呟くと、光が葵の方を見た。  そんな光に葵がキスをした。 「ファーストキスが結婚後なんて、笑える!最高!」 と、ケタケタ笑う葵を見て、光は、 『この笑顔にずっと会いたかった…』 と、改めて、葵がそばにいる喜びに浸っていた。  そして二人は、自宅へと手を繋いで帰って行った。 …END
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