光×葵

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光×葵

そして、夕方、 葵が学校から帰ってきた。 「光は〜、あっ、小林君の所かぁ…。」 と、思いながら、リビングに居ると、チャイムが鳴った。 「はぁい!」 と言ってドアを開けると… 「おお! 久しぶりだな!」 と、小林が手を上げて、葵に声をかけた。   「光は〜?」 と、葵が挨拶もしないで問いかけた。  小林は、 「ほれ、いるだろ」 と、小林の隣のイケメンを指差した。  葵はチラッとその子に目をやるが、 「ちょっと!冗談はいいから、早く返して!」 と、葵は小林を睨んだ。  小林がニヤッと笑った。 「光〜!居るなら手を上げて〜!」 と言うと、隣のイケメンが無言のまま手を上げた。  その様子は、昨日から見ていた光そのものだった。  葵が無言で光を見ていると、小林が、 「おたくら親子、ヒドくない?」 「男の子を女の子だと間違えるなんてさ」 と、これみよがしにため息をついた。  それを聞いて、 「はぁ〜!?あんた、男だったの?」 と、思わず声を上げると、光は頷いた。    それを見て、葵はしゃがみ込み、 「え〜!え〜!マジなのかぁ!」 「やばいじゃん!!!」 と言った途端顔を上げ、光を見上げる形のまま、 「下着、ゴメン!」 「セクハラじゃないから!」 と、手を合わせて謝った。  小林は笑いながら、 「香さんも絶句でその後謝ってたよ!」 「親子似てるねぇ〜!」 と、葵をからかった。  葵は頬を膨らませて、じろっと小林を見ると、 「じゃあ、そういう事で!」 「光も、またな!」 と言って、葵から逃げるように去っていった。  部屋に入って、葵はもう一度、 「ホント、ゴメンね」 と、謝った。  光が頷いたのを見て、 「でも、いい感じにしてもらえたね〜!」 と、髪型や服装を見ながら葵が笑いかけると、光は2回頷いた。  光の瞳を見ると、昨日は色の無い瞳をしていたのに、今日は少しキラキラしている様に見えて、葵は嬉しくなった。 「さぁて!お母さんから仕事行くって連絡きたし、うちらは、二人で夕飯でも作るかぁ!」 「光、手伝ってよ!」 と、光の腕を掴んで、泣き笑いしそうになる顔を光に見られないように隠しながらダイニングへと向かった。  葵と光が寝てしまった深夜、香は一人、部屋の中で考えていた。  昨日の事、そして、光が男の子だった事。  小林に聞いた感じだと、光は体を鍛えたいのかも…。  いつか、父親と対峙した時耐えられる精神力になって欲しい…。  香は、そう思っていた。
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