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#3
一昨日は嵐で辺り一帯、停電になったようだ。
いまだに電気系統は回復しないみたいだ。
室温は優に三十度に達している。ヤケに蒸し暑い。汗が頬を伝っていく。
オレの名前は、星ヒカル。
まるで昭和のセクシー女優のような名前だが、れっきとした男性だ。
一応、警視庁の刑事をしている。
ある上級国民の息子を殴り、現在、AI課サイバー対策室へ島流しにされていた。
そこで面倒をみているのが、アイドル刑事の阿井アイだ。
なんの因果か、オレは女子高生アイドルの子守りを仰せつかった。
今日、彼女は学校からの帰りの途中らしい。
事件現場には、まったくそぐわないセーラー服を着たまま捜査に加わっていた。
事件現場となった別荘二階の仕事部屋にはオレと阿井アイ、そして容疑者の馬場一朗と編集担当の夏八木マコトがいた。
一階には警官が警備に当たっている。
まだ事件は自殺か、他殺かあやふやな状態だ。しかし亡くなったのが人気作家なので、放っておくワケにもいかない。
オレたちは、共同執筆者の馬場一朗と担当編集者の夏八木マコトと共に、事件現場となった別荘の二階にある仕事部屋に集まっていた。
しかし美少女アイドルは真面目に捜査をする気もないようだ。
本棚にある明日葉友朗の著作を手に取って嬉しそうにペラペラとページを捲っている。
明日葉 友朗のデビュー作品、『明日はトモロー』だ。今も人気シリーズになっている。間違いなく彼ら二人の出世作だ。
コラムか、何かで『明日はトモロー』のヒロインは馬場一朗の亡くなった姉がモデルだと聞いた事がある。
アイアイはパタンと本を閉じ、ニコニコと微笑んだ。
「じゃァ……、そう言うことで!
時間もないし。
さっさと、この人を逮捕しちゃって!」
まるで、ギャルソンに給仕を命じるようにアゴでオレへ指示を送ってきた。
「なにィ」容疑者扱いされ、馬場一朗は阿井アイを睨みつけた。
「おいおい、おバカか!
そう言うコトでッて、どういうコトだよ。
いいか。アイアイ! 事件はまだ自他殺両面で捜査されているんだ。他殺と決まったワケじゃないんだよ」
オレはなんとか、この場を治めようと必死だ。
「ン、聞いてなかったの。ポチ!」
「誰がポチだ! 星だよ。星!」
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