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「まだ半人前ですけどね。マキナさんらしき女性を以前見かけた気がしたんです。それでつい、声をかけてしまいました」
「そうなんですか」
「女々しいですよね」
「いえ、そんなこと」
キヨミネはマキナをここではないどこかで見初めていたのだろう、だからマヒナをマキナだと思いながら口説いているのだ。なんだか複雑な気分である。
「プレートに自営業って書かれてるのは……」
「寺の檀家収入だけでは生活できませんから。大学出て修行して住職である父親の跡を継ぐために僧侶になりましたが、ふだんは敷地内にある不動産管理の方を」
「しっかりなさってるのですね」
大学を出てから就職もせずフリーランスの木工作家として実家に居座っているマヒナとは大違いだ。堅実な姉が彼を見たら、どんな反応をするだろうと思わず考え込んでしまう。
――やっぱり結婚を前提にした出会いの場なんだな。
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