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二十三歳のマヒナははは、と乾いた笑みを浮かべる。それでも彼が自分に向けて話してくれたことが嬉しくて、ついつい自分の推しである海堂尊阿弥陀について語ってしまう。それくらいしか提供できる話題がなかったからなのだが、キヨミネは知ってますよと彼女の話に付き合ってくれた。
「そういえばいま海堂尊の阿弥陀如来が近くの博物館に来てますよね」
「あ、ご存じでしたか! そうなんです、大学博物館の特別仏像展で」
「マキナさんは行かれたのですか?」
「いえ、これからなんです。それで、もし、ご興味がありましたら……」
マヒナがマキナから入手した大学博物館の歳末展示のチケットを見せると、キヨミネは嬉しそうに首を振る。
「まさかマキナさんの方から誘っていただけるとは思いもしませんでした。喜んで」
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