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重なる唇はすぐに離れて誠司さんが僕を覗き込む。初めてキスをした感触はとても気持ちよくて、胸の奥で言葉にならない感情がグッと固くなる。
「もっとする?」
綺麗な双眸に小さく頷くとまたすぐに重なり、柔らかくて温かい誠司さんの唇に僕は酔いしれた。唇を挟まれて舐められ、カウンターチェアの背もたれに預けた体を抱きしめられて。
僕には絶対に起きない奇跡が突然目の前にある事が怖かった。
でも一度重なると次へと欲求は出てきてしまう。
「んん……」
突然侵入してきた舌を受け入れ初めてのディープキス。人の舌が口内に入ると呼吸も出来ないものなんだって初めて知った。
角度を変えて深まるキスに僕は誠司さんのシャツを握り、彼を受け入れる度にどんどん気持ちが昂まる。
絡ませた舌が卑猥な音を漏らしていて、この店にいつも流れてるジャズが消えてることも分かった。
誠司さんは唇を離して僕を力強く抱きしめてくれる。
「ねぇ陸くん、したくない?」
「─── ッ」
その囁きで一気に体の奥が熱くなった。
こんな体の何処にそんな熱があったのか、でも凄く救われた気がしてありったけの力で目の前の誠司さんを抱きしめた。
「可愛いよ、初めて?」
「……ん」
どう思われるんだろうと思ったんだ。
25歳にもなって何の経験も無くて、だからうまく返事が出来なくて俯くだけで返して。
でもこんな事もう二度と起きないかもしれないから。
カクテルと誠司さんに酔ってしまって。
「でも……出来ます」
「本当に可愛い、力抜いてて」
熱っぽい声に頷くと誠司さんの手が髪を撫でて頬に落ちる。自然と上がる顎に半開きの唇はすぐに重なって、まるで恋人にするみたいに何度も深く交わる。
息も出来ない、でもちっとも気にならないくらい気持ちよかった。
粘膜が触れ合う度に緊張が溶けてって、濃厚な香りの中でうっとりする。
誠司さんの手が何度も僕の耳や頬を優しく撫で、それだけで夢見心地になる。
誠司さんの指が首筋を通り、僕のシャツのボタンを一つずつ外していく。本当に大丈夫なのか自信なんて無かったけど、キスしながら薄目を開けたら男らしい瞳とぶつかった。
スッと入ってきた指先は僕の乳首をキュッと摘まむ。
「あっあ……」
その甘い痺れに声を出せば、誠司さんはまた可愛いと言って塞いでくる。
乳首を捏ねくり回す厭らしい指先、カクテルを作る綺麗な手が今、自分の体の上を滑り落ちていく。
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