咲いて、

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目を開けたとき、まだ夜なのかと思うくらい室内は暗かった。分厚いグレーの遮光カーテンは外をちゃんと遮断しているらしく、外の明るさは微塵も感じられない。 壁に掛かる時計を見れば10時を過ぎている。 背中がとても暖かくて自分が誠司さんに抱きしめられているのも同時に分かって、目の前にくたりと休んでる手にそっと触れてみる。 ひんやりする指、自分の中に入ってきた指、とても綺麗な指に何度も昂った自分を思い出す。 じんわりする下半身が昨夜の痴態を思い出してるみたいだ。 現実だったんだ、って。 夢じゃなかった、って。 起こさないようにそっと向きを変え、誠司さんの寝顔を間近で見詰めた。規則正しい寝息に長いまつ毛、こんな人に抱かれたって死ぬまで絶対に覚えてる。 「んん…」 誠司さんが寝返りをしようと僕から腕を離すと、綺麗な二重がゆっくり開いて目が合う。ドキドキして柔らかな枕に顔を隠せば、くしゃくしゃって頭を撫でられてクスクス笑われる。 「おはよ、陸。……今何時?」 「10時……ですね」 「そっかー。サンドイッチでも作ろうか」 独り言みたいにそう言ってまた僕の頭を撫でて起き上がると、誠司さんは先にベッドを出てリビングへと向かう。 すぐに自分も着替えをして後を追いかけ、食事なんて作ったことないみたいなキッチンに立った。なんでこんなに綺麗なんだろうって、僕とは違う。 「残念、レタスも無いしチーズも無い、見事に酒ばっかりだ」 冷蔵庫を開けて確認しながらそう話す誠司さんに笑って、でもハムは見つけたと僕に微笑んで見せる。 「ハムだけのサンドイッチもなかなかだよ?食べたことある?」 「ハムだけってのは無いかも」 「だろ?作ってあげるから陸は向こうで待ってて」 向こうと言いながら僕をくるりと回して、肩を押されてキッチンを出るとリビングの椅子に座らせる。 「いっぱい作ってあげるから」 「いっぱいなんて、普通で大丈夫ですよ」 「いいや、陸は少し太った方がいいよ。少し痩せ過ぎだ」 頭のてっぺんにキスをされ、やっぱりちゃんと食べようと、会社のお昼時間もちゃんと食べてその後の休憩だけしなければいいって決意する。 誠司さんが作ってくれたハムサンドはとても美味しくて、食パン4枚分のサンドイッチを1人で平らげた。 久しぶりに満腹になったお腹を撫で、反対側に座る誠司さんを見ればもう食べ終えていたらしくジッと見ている。 「美味しかった?」 「はい、とっても」 「良かった」 綺麗な顔は笑顔になってた。
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