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中学2年の夏、自分は男しか好きになれないんだって自覚した。
その時は絶望で死にたいなんて思ったりもして、でもそんな度胸は自分には無いから黙って過ごした。言葉を忘れてしまうくらいに寡黙になった。
何度も、何度も、何度も見送り続けた恋だって当然のことだったから、何ひとつ心に残ることも無い。
でも本当は後悔ってあるらしい。
あの時あぁすれば良かった、こうすれば良かった、なぜあんな事を言ってしまったのか、なぜ言わなかった、とか。
ありがたいことに、僕にはそんなものが無かったから残らないのかも。でもそういうの聞いたりすると少し羨ましくも思ったんだけど。
そんな自分だから、大学で谷内 文也と友達になれたのは僕の人生で一番の出来事だ。
何でも話せる友人はいつしか自分の性質を話せる親友へと変わっていって、文也と親友になれたことで明るくなった。少なくとも昔よりは他人と話せるようになったくらいに。
「ねー、今日も行こうか?」
「文也だってたまには違う所行きたいんじゃない?毎回僕の行きたい所で申し訳ないよ」
「何言ってんだよ、今更。陸は毎日でも誠司さんに会いたいんでしょ?」
「もうっ!からかうなよ」
「からかってねーって」
文也の優しさに触れるとたまらなく嬉しくなる。
友達って凄いなって。
当たり前みたいに優しくされたり、優しくしたり、一緒にご飯行ったり、カラオケ行ったり、愚痴言い合ったり、そんなのとは無縁の生活してたから。
本当、親友っていう存在は凄いなって社会人になっても思う。
キラキラしている街を2人並んで歩いて、その店が見えるとすぐに緊張してくる。
表向きには店だって分からないような入り口で、周りは明るいのにその店だけはいつも暗くて。
壁に埋め込まれた小さな看板には『BLUE』の文字。
このバーがオープンしてる時には、豆電球よりも小さな青いライトがぽつんと光ってる状態。
ネオンが輝く街では誰も気付かない小さな点は、まるで自分みたいだなって何度も思ってきた。
輝く中では誰もそんな点に気付かないから。
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