枯れ落ちる

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「男の人も大丈夫なんでしょう?男とは付き合ったことある?」 「あー、学生の頃にね」 「女の人の方が好き?」 「いや、どっちが好きってよりも出会う数が女の方が圧倒的にあるからね」 「じゃあ男の人を喰ったことは?」 「喰ったこと?ああ、抱いたことね。まあ……付き合った人数分。ってか、何人とか聞いてくるなよ。聞いたら俺は寝るぞ」 質問が止まらなくなる。 今まで花ちゃんのパパでマメトコの飼い主で僕の愚痴相手だった芹澤直人が、どんな人間でどんな生き方をしてきたのかを知らなかった。 「付き合った人数分って、意外と真面目な人なんだね」 「意外とってのは余計だね」 「夏美さん、幸せ者だ」 「そう?俺も幸せ者だけどね」 いいなって純粋に思った。特に失恋して親友が誠司さんの隣にいる今の状況では痛いほどだ。 人の幸せって周りも幸せにするって言うけれど、今の僕には眩し過ぎて聞くのが辛くもなる。 名前を付けようも無いこの感覚が妙に胸を締め付けてくる。羨ましいって複雑な感情なんだと初めて知った。 「広野はどうして誠司を好きになった?」 「なんだったんだろ……かっこいいから好きになった。優しいし、まあ実際は優しくないけど。笑顔も素敵だし、実際は残酷な笑顔だったけど」 「もう会うな。誠司と会うには経験が無さすぎる」 「経験か……誠司さんが初めてだったからな」 「それって挿入()れられたってこと?」 「えっ!?」 「いや、そういう意味を言ってるのかなって思って聞いてたんだけど」 驚く僕に驚いた顔で答える芹澤さんは、また少しだけハイボールを飲む。そんなにちびちび飲んでたら三日くらいかかるんじゃないだろうか。 「あー、されたんだね。アイツそんな事までしたんだ?」 そして僕の表情を見て感じ取った芹澤さんは、誠司さんを心底軽蔑してるみたいな表情だ。 「普通違うの?」 「いや、慣れてないのにそんな事しないだろ。だって広野考えてもみろよ、アナルだよ?」 「……そうだけど」 「普通なら抜き合い程度だろ。慣れてるならまだしも遊びでそこまでするのは考えられないな、俺はね」 「あー、芹澤さんは遊びなら抜き合い、本気なら挿入」 「なんでそうなるんだ」 「そういう風にしか聞こえなかった」 「だからー、女性は受け入れられるようになってんの。バイ菌だってある程度は処理出来るようになってる。男は違うだろ?バイ菌だってそうだし手間を掛けないと痛みもある」 「あー、手間掛けてまで抱かないってね」 「違う!女性の膣より受け入れに優れてはいないし、繊細な場所だって言ってんの」 「あー、好きでもなければその繊細な場所に時間を掛けない」 「……広野、お前酷い奴だな」 初めて勝った気がする。  
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