第一章

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今日もつまらなかったな、なんて思いながら昼間の彼の言葉を思い出していた。 『真っ直ぐな瞳の奥にも、どこか小さな闇は必ず存在する。』 彼はどうしてこれを思ったのだろう。きっと誰かの瞳を見て気付いたのだろうが、きっとこれは彼のことも指している気がした。帰りの電車で見た彼の瞳の奥にも闇が見えた。でも、それは彼の家柄が問題だろう。僕はただ彼が犯罪に手を染めないことを願うだけだ。頭の良い大人たちに束縛されていた人や虐待みたいなことを受けていた人は犯罪に手を染めがちだ。だから、彼にはこれら全てが当てはまる。僕みたいな奴が犯罪に手を染めるのはいいが、彼みたいな人はそうそういるようなものでもないと僕は思った。 気付けば襖の隙間から光が差していた。きっと大人たちが帰ってきたんだろうなんて思いながら、ゆっくりと襖を開けて二階に上がった。今日はいつもと違う服を着ようと、白いノースリーブと普通のジーパンを履いて黒いパーカーを羽織った。ゆっくりと階段を下りて、静かに家を出た。 外に出ると太陽の日差しが眩しかった。帽子を被ってくるべきだったか、と思いながら近くのドラッグストアに向かった。お金はあまり無いが、彼の為だと思いながら包帯を買った。ビニール袋を持って彼のいるはずの公園に向かった。 「おはよ、今日も暑いね」 彼は半袖を着ているが腰にはパーカーを巻いていた。 「うん、でも半袖はよくないよ」 何故なら彼の腕には大きな痣と血の固まった傷跡があったから。でも、彼はあまり気にしないみたいだが。 「ほら、包帯あるから水でその固まった血流してきな」 彼は少し我慢しているような声で分かった、と返事した。少し滲みるのだろう、顔を歪ませながら水で流していた。ちゃんと流してきたのか、ゆっくりと僕の方に戻ってきた。 「ごめんね、ありがとう」 そう言いながら腕を僕の方に向けてきた。包帯を巻いてくれってことなのだろう。僕はあまり押し付けずにゆっくりと包帯を巻いた。巻いていくうちに袖の方に目が行った。何か赤黒いものが見えた気がしたのだ。 「ねぇ、袖捲っていい?」 彼は小さく頷いた。ゆっくりと袖を捲った。すると思っていた以上の傷跡があった。無理しないでね、と言い、ほぼ腕全体を包帯で巻いた。 「ほら、ちゃんとパーカー着なね」 彼は今日も大人たちとの会議というものがある。これは大人の決まりらしい。 「じゃあ、行ってくる」 そう言った彼の瞳の奥には、やはり大きな闇が見えた。
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