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上田拓実サイド
気がついたら保健室のベッドの上にいて、「大丈夫か?」と俺を覗き込むダイキと目があったので、反射的に立ち上がる。
隣には、さっきの俺と同じくベッドに横たわり、何故かにやにやしている美緒。
「なんで美緒も保健室にいるんだ?」と尋ねる。
自分が倒れたことは何となく覚えているが、美緒のことまでは気づけなかった。
「うーん…まあ、それはおいといて、告白の答え、はよプリーズ。」
はぐらかされた。
しかも、告白って……
「え、美緒って俺のこと好きなの?」
「「違う」」
思わずテンションの上がった俺が訊くと、二人が声を揃えて答えた。
「え、覚えてないの?うっそでしょ嘘でしょ?」
「まじか………」
動揺した様子の二人。
一体何があったんだ、と俺が詳しい説明を求めると、これまでの一部始終を事細かに教えてくれた。
ダイキが俺のことを好きだということ、俺に告白するために密室をつくり出したということ。そして、美緒も告白の衝撃で気絶したということ。
「………ダイキが、俺のことを好き…?」
これまでの記憶を一時的に失っていたらしい俺は、美緒の説明を聞き全てを思い出した。
よくよく見ると、か弱い子どものような表情で泣きそうになりながらこちらを見返すダイキと目があった。
「ダイキ…」
こいつが泣きそうになってるの、初めてみた。
いや、違う。俺達がまだ小さかった頃、ダイキが自転車に轢かれかけたことがある。その時もたしかこんな顔をしていて、そんなダイキを少しでも元気づけようと必死で笑っていたっけ。
「俺も、好きだ。」
あの日俺は、ダイキのことを絶対に悲しませないと誓った。それは今でも強く心の中にある。
真っ赤に染まったダイキの顔をもっと近くで感じたくて、
俺は長いキスをした。
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