クリスマスの前

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「コグレさんに会えないの、残念だけど仕方ないね。大変だよね」  あーちゃんも水曜には戻ったはずだけれど、親しい人が亡くなったから当面向こうにいる、ということにしてある。連絡とれないし。  あ、そうそう、と高峰さんが荷物を出した。 「これ、ウィーンのお土産のチョコレートです」  約二十センチ角。カラフルな王侯貴族風のイラストが細かくあしらわれた、相当にお洒落な箱だ。皆からの土産ではあるけれど、食べ物調査担当の高峰さんのセレクトだろう。……それにしてもデカいな。 「お二人で食べて貰えたらいいなと思って。コグレさんの帰国遅くて寂しいでしょうけれど、会えたらご一緒にどうぞ」 「…………うん、ありがとう。箱まで素敵だ」  おっと。お心遣いがグサリと刺さって、一瞬、間が空いてしまったぞ。なるほど、二人で食べるから大き目の箱ひとつなのだ。  朝食会場で、離れた席で食べていたことがあった。あの時はまだ、俺たちの関係にショックを受けていたはずの高峰さん。彼女なりに消化してくれて、受けとめた結果のラブラブチョコだ。  高峰さんの想像の中の俺たちは、きっと大変仲良しで甘い生活を送っているのだろう。同じベッドで、同じ箱からチョコを摘まむ二人。なんかチョットある種の女性好みのアヤシイニオイがするな。でも。  ……うらやましいぞ。  俺が勝手に想像した高峰さんの想像の中の自分に、嫉妬する。ああ、もう……ねじくれ曲がってるなあ……。
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