127人が本棚に入れています
本棚に追加
「コグレさんに会えないの、残念だけど仕方ないね。大変だよね」
あーちゃんも水曜には戻ったはずだけれど、親しい人が亡くなったから当面向こうにいる、ということにしてある。連絡とれないし。
あ、そうそう、と高峰さんが荷物を出した。
「これ、ウィーンのお土産のチョコレートです」
約二十センチ角。カラフルな王侯貴族風のイラストが細かくあしらわれた、相当にお洒落な箱だ。皆からの土産ではあるけれど、食べ物調査担当の高峰さんのセレクトだろう。……それにしてもデカいな。
「お二人で食べて貰えたらいいなと思って。コグレさんの帰国遅くて寂しいでしょうけれど、会えたらご一緒にどうぞ」
「…………うん、ありがとう。箱まで素敵だ」
おっと。お心遣いがグサリと刺さって、一瞬、間が空いてしまったぞ。なるほど、二人で食べるから大き目の箱ひとつなのだ。
朝食会場で、離れた席で食べていたことがあった。あの時はまだ、俺たちの関係にショックを受けていたはずの高峰さん。彼女なりに消化してくれて、受けとめた結果のラブラブチョコだ。
高峰さんの想像の中の俺たちは、きっと大変仲良しで甘い生活を送っているのだろう。同じベッドで、同じ箱からチョコを摘まむ二人。なんかチョットある種の女性好みのアヤシイニオイがするな。でも。
……うらやましいぞ。
俺が勝手に想像した高峰さんの想像の中の自分に、嫉妬する。ああ、もう……ねじくれ曲がってるなあ……。
最初のコメントを投稿しよう!