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ふと、ミレイさんと目が合った。
「ヒロさん、ウィーンもね、すごくいいところでしたよ。今度ぜひ行ってみてください」
ほかの二人も即参戦し、あれやこれやと土産話が始まった。
……そうだな。ミレイさんこそ同志だ。勇気を振り絞って、あのカフェのドアを。あの個室のドアを開けた、仲間だ。
だからなのか、あるいは彼女の元からのアビリティか。
あーちゃんの話で俺が消耗することに気づいたらしく、大変きれいに話題を変えてくれた。
ようやく話題が途切れた時に、俺は店内と彼女たちをぐるりと眺めて、ゆったりと息をついた。
うん。ずいぶん、落ち着いた。
あーちゃんを思い出すと自律神経が乱れる、俺。
そしてこの数日、実はあーちゃんに会うことすらも少し怖くなっていたんだ。
パリから一人で戻り、いつも通りに働き始め。
唯一買って戻ったミニツリーを木曜に手放してからは特に、パリでの全てが幻みたいに思えて来ちゃってさ。急速に以前と同じ日常に染まっていくから。
そして、あーちゃんとの日々が夢みたいに思えて。
一月にあーちゃんに会えるのか。会っても、もう果てしなく遠い人になっているんじゃないだろか。と不安になった。
この三名様は、異世界に見えるあの日々と俺をつなぐ妖精さんたちなのだ。
そして俺は約束の日まで意識を保つスペシャルアイテムを手に入れた。
ウィーン土産の、チョコレート。
これをね。あーちゃんに渡すんだ。
妖精さんたちからあーちゃんへのお土産を渡す、それは俺の義務だ。
だから、リュボイに行かなくちゃ。絶対に、行かなくちゃ。
高峰さん、ありがとう! ……って、パリでも思ったことがあったな?
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