リュボイ

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リュボイ

「ねえ、ちょっとぉ。その端の席、あたしの定位置なのよ。空けてくれる?……んもう、(しゅう)さんったら。場所とっておいてくれればいいのに」  リュボイに内設されたバーカウンター。  左端の席でちんまりと時を過ごしていた俺の右隣にドカッと女性が座り、俺と愁さんとやらに次々に毒を吐いた。 「俺の仕事じゃないよ。来月やるなら別チャージで」  バーカウンターの男がクールに答える。  愁さんか。聞き覚えのある名だな。と思いつつ、不快な女にチラリと目を遣る。  ん? なんか俺の後頭部あたりでこう、もや~って。大変イヤな感じするな。定位置というからには馴染らしいけど……。 「え、ちょっとあなた」 「はい?」 「なんか……会ったことない?」 「?」 「あ、間違ってもナンパじゃないからね。リアルで。ナンパどころか、なんっかこう、……気に食わないのよねえ」  失礼な。当然腹が立ち、俺こそ今度はマジマジと相手を見てやる……あ! 思い出したぞ、ダークレッドの女だ!   この前パリで、里葉さんから来た恐るべき魔女たちの会の写真で復習したところだった。実物のガラの悪さに唖然として気づかなかった。  今回はラメ入りのふうわりした白いニットにタイトなスカート、と服装は違うけれど、胸の谷間は絶賛公開中だ。あのもっちり感には確かに見覚えがある。本日はラメニットと命名しよう。まんまだけど、新種の動物みたいでもあるな。サバンナあたりでぴょこぴょこしてそう。
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