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あーちゃんを俺様にサラワレタ残念な記憶が残っているのだろう。
俺の視線にもさらにカチンときたらしく、見返して来る。負けずにカチン。
「……だからぁ」
「は?」
「とにかく、どいてよ」
「なんで」
「定位置だってば」
「別チャージ払ってないんでしょ」
「あなたがどけばいいだけよ」
「あきらめればいいだけだろ」
……ってか俺ってこういうキャラだったかな。
もめる方が面倒だからって、どいてたんじゃないか。以前なら。
なんて考えながら、ラメニットとガッツリと睨み合う。
「あのさあ。もしかして。……ナンパ中?」
へ? この声は。
睨み合う俺たちの後ろからかかる美麗低音声に振り向くと。………いた!!
あーちゃん。あーちゃんだ。胸元の開いたざっくりとしたグレーのシャツ。黒のスリムパンツ。そこに乗っかる、超絶美しい、そのお顔……。
ん? でも。ちょと待てゴラァ!
「あ、あらぁ。なんかチョーイケメン……」
初対面を装うらしきラメニットの言葉を遠くに聞きながら、俺はするりと椅子から立ち上がり。
……そのまま、真っすぐに、あーちゃんに抱きついた。
両腕を脇から回し背に手のひらを当て、肩口に顔を擦りつける。
……ああ。あーちゃんだ。あーちゃんの匂い。あーちゃんの骨格。あーちゃんの、温もり。
「ちょっ。何よ、ダレこれ。ねえ、知り合い?」
あまりの驚きに、初対面仮面が破れつつあるラメニットの詰問調の声がする。答える代りに俺の背にも大きな両手が置かれ、そのままぎゅうう~、と、抱き締められた。
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