優しさなんていらないから私のことを愛してよ。

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優しさなんていらないから私のことを愛してよ。

彼に求められることが嬉しかった。 都合がいい関係でも、求められている時間が幸せだった。 身体を重ねたあと彼は必ずベランダに出て煙草に火をつける。 その後ろ姿を見ると何故か悲しくなる。 「ねぇ、私の事どう思う?」 胸が締め付けられるような苦しさからぽろっと出てしまった一言。 彼は少し驚いたような表情をしたが、優しく 微笑みながら頭を撫でて、 「どう思うって、可愛いと思うよ。」 彼の嘘はわかりやすい。 「そっか。」 私がそう返事すると彼はまたベランダで煙草を吸い始めた。 一本吸い終えると帰って行った。 もうこんな関係やめたい。 そう思いながら、また彼に会いたいと思っている自分がいる。 部屋にはまだ彼の甘くて少し煙たい匂いがする。 それでさえ愛おしくて、恋しい。 1週間後、彼から「会いたい」とLINEが。 また私は彼を許してしまった。 彼が私を求めていることが嬉しいから。 きっと私の”カタチ”以外もいつかは愛してくれる。 そう自分に言い聞かせてまた身体を重ねる。
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