第二十四話 犯人?

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「本当に反省しています。もう二度とこんな真似はしないと約束しますから」 「信じられません」  香織はきっぱりと言い放ち、達也も同意するように深く首肯した。  二人の態度に今井が絶望的な声を上げる。 「頼むよ……どうか通報だけは勘弁してくれ。あんたらに危害を加えるつもりなんてこれっぽっちもないからさ」  確かに彼はすぐに免許と学生証を見せてきたし、こうして素直に謝っている。それに物騒な武器なども持ってはいないようだ。  とはいえこんな怪しい男の言葉を、そう簡単に信じられるわけもなかった。 「――前にうちに嫌がらせをして来たのは、あなたなの?」 「はぁ? 嫌がらせってなんすか?」  今井が怪しげに眉根を寄せている。 「しらばっくれないで! うちの玄関にゴミをばら撒いたり、ポストに虫の死骸を入れたりしたでしょう!」  香織は怒りを込めて語気を強めるが、男は怪訝そうな顔つきになるばかりだった。 「え……何それ気持ち悪ぃ。俺、そんな陰湿な真似したことないっすよ」 「嘘よ! あなた以外に誰があんなことをすると言うの!」 「知らねーよそんなの。言っちゃ悪いけど、近所でなんか恨みでも買ったんじゃね? 確かに俺は奥さんに一目惚れして、家までつけたことは認める。でもそれ以外には何もしていないのに、嫌がらせの冤罪なんて吹っ掛けられたら堪らないよ」  相手の言い分に、香織はますます腹立たしさを募らせる。  だが実際にこの男がやったと言う証拠もないし、本当に困惑しているように見える。  少なくとも今の段階では、これ以上彼を責めても仕方がないのかもしれない。 「お、俺はちゃんと免許も学生証も見せたし、なんなら連絡先を教えても構わないよ。だから頼む。警察を呼ぶのだけは勘弁してくれ!」  香織が達也の顔色を窺うと、彼は小さく嘆息しをしてた。 「正直言って、香織さんへのストーカー行為は許せません。しかし今ここで彼に警察の厄介になってもらうのも、後味が悪い気がします。大事にしたくはありませんし、できることならば穏便に済ませたい」 「じゃあ……!」  男は期待を込めて達也を見つめる。達也は厳しい表情を浮かべたままだったが、やがて静かに香織の方へ視線を移した。 「香織さん、どうしますか?」 「わ……私は、達也さんに全てを委ねます。危険がないとは言い切れませんが、あなたの判断に任せます」 「――わかりました」  達也は男に向かって言った。 「では今井亮介さん、今日のところはこれで引き下がってください。ただし次に何かあったら容赦はしません。警察に通報することも躊躇わないつもりでいます」 「約束するよ。俺はもう二度とあんた達の前に姿を見せたりしない。もし見かけた時は、すぐにその場から離れるようにする」  今井は真剣な面持ちでそう答えた。  香織からしたら達也の判断は少々意外ではあったが、何か考えがあるのだろう。  それから今井の連絡先を聞き出してから、二人はひとまず彼と別れたのだった。
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