(2)アジサイのキミ

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(2)アジサイのキミ

桜の終わり。紫陽花の色若い季節。五月雨の水溜まりに映る月から僕は話しかけられない。寂しさで掴んだポケットのウイスキーを口に含めながらフラリフラリと足は揺れた。欲しいものは分かっている。でも生きていく為には忘れたかった。 頬を赤くそめて答える「ある大切な人との紫陽花の思い出があるから」青紫重なるガクの花。偶然に見かけたキミの横顔。頬に流れる雨は微弱な光。そこに映り込む花は命を懸けて育てた真赤の紫陽花。普通ではあり得ないほどの赤そして猛毒。見つめるだけでひどい吐き気とめまいがする恋。 目を閉じ口には戯れ言の歌声。 開いて広がるはアジサイのキミ。 笑顔も涙も悲しみもすべての日々は 走馬灯となって流れていく。 枯れ果てた僕の姿を見て僕は僕に審判を下す。 その時、涙は泣いているのか微笑んでいるのか。 続
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