(5)真島有様 餡川恵より

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(5)真島有様 餡川恵より

紫陽花の花をみると特別な気持ちになる。同化…同様のもの、一体のものになりたくなる。だからそのもの(人)によって危うい状態になってしまう時も。適度な距離。好きになりすぎて自身を保てなくなり身を滅ぼす程に。 なぜそうなってしまったか? 中学生の時に災害があった。その時の経験により心に乱れを作ってしまったのかもしれない。恋愛にも影を落としている。この影は現在、21才の僕の人生にも多少なりとも影響を与えている。今後少しずつ語っていきたい思っている。 指先を指し示すようにカラスの声が横切っていく。 寒いので家へ帰るのだろう。 眼の前に流れる川は、よく見ると透明な薄い氷が張り、 小雪は川辺りの手すりを少しずつ白く変化していっていた。 キミからの手紙。その懐かしい太くて意志の強い字に手を添える。 あたたかく感じた。寒さで鳥肌が立っているのに。 ゆっくりと丁寧に封を切る。 〈餡川恵(あんかわけい)からの手紙〉 真島有様へ 有、お元気ですか? 私は、今もこの場所で生きています。 少し長い手紙になると思います。 初めてあなたと出逢ったのは、 私がバーテンダーの夜のバイトを はじめた今年の春だったよね。 ずいぶん前に出逢っていたと 思っていたけど、実は まだ半年くらい前だったんだね。 今も有がこの家でシロと ボール投げやお散歩に行ってくれていた 日々を思い出します。 私達は、どのみち出会う運命だったのだと思います。 どんな形にせよ。私達の間に先生の存在があるかぎり… あなたにとってはお父様。私にとっては元婚約者。 そうだね恋人にしろ子供としてでも出会っていた。 私はこの状況に悲しんだままでいいのか? 運命として受け入れ笑顔でいた方がいいのか? 毎日考えています。 8月の暑い夏の日に最後に あなたの震える背中を見て別れて以来。 会わないほうが良かったのか。 会えて良かったのか。 でも、今でもあなた自身に 出逢えたことについては 運命に感謝しています。 あなたは私を明るくしてくれた。 迷い悩んでひとりで部屋に 引きこもっていたから。 電車で近くの街に住んでいたから もしかしたらすれ違ってたらいいね。 って話してたの覚えてる? もし出逢えてなくても…、 でも、わかるよ。 有だって。 いつだってあなただとわかる。 誰よりも繊細。 でも自由で大胆。 私が持ってないものを あなたは持っているから。 俺、自信ないって 笑ってたけどね。 私の宝物、愛する有。 心を込めてこの手紙を書いています。 私とあなたのお父さんについての真実。 そして今後のあなたとの仲について。 書いていこうと思います。 続
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