5663人が本棚に入れています
本棚に追加
横を通り過ぎようとした、ダークスーツの腕をぐっと引き止めていた。
「……國井さん……?」
足を止めた島田さんが怪訝そうに振り返る。
「こ、これは……、会長への気遣いとかじゃなくて、私の意志です」
「――!」
キッパリ告げると、切れ長の瞳が丸くなる。
それを見て、一瞬怖気づきそうになるけれど、手のひらをぎゅっと握って、自分に活を入れた。
「ゼネラルマネージャーには申し訳ないのですが、私が引き合わせてもらいたいから、会長にお願いしたいと思っているんです。だから、迷惑でも無駄でもなくて、私の気持ちです……」
鬱陶しがられるのはわかっているけれど、誤解されたまま全てが終わってしまうのは嫌だと思った。
私の意志や気持ちまで消えてなくなってしまうのは、悲しすぎるよ。
最初のコメントを投稿しよう!