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嫉妬(冬月由貴)
「全然ダメ! 色合わせが派手なのが多すぎるし年齢層の幅も狭い」
資料を投げ置いた僕は、腕を組み聞こえる様に大きなため息を吐くと、頬杖をついた三人は萎縮することもなく、僕を呆れた顔で見る。
「何?」
「大好きな和毅さんと一緒に暮らせて」
「和毅さんじゃなくて秋島さん!」
「毎日の送り迎えまで和毅さんがしてくれて」
「だから! 和毅さんじゃなくて!」
「嫉妬なんて和毅さんが可愛そうですよぉ〜?」
首を傾げ、萌え袖になってる両手で頬を包む仕草は、男性が好きな仕草の順位に入ってそうで口を噤む。
和毅もこういう仕草とかすれば喜んでくれ……違う! 今はだめ、和毅が謝るまで、口なんてきいてやらないんだから!
女の子に囲まれてデレデレして!
やっぱりチャラ男はチャラ男でしかない!
「嫉妬なんてしてません!」
「図星ですね」
「ど〜でもいいですけどぉ〜部長は今なにか欲しいものありますかぁ?」
「仕事ができる部下とモテない恋人」
人の話を聞かず、話題を変えてきた彼女達に、にこっと微笑みながら間を置かずに言い放ってしまった言葉は、三人を凍らせてしまうのだが、物事を第三者目線でみている冷静な彼女だけが、なるほどと手を打つ。
「部長の『別にいいんだけど』の言葉は別に良くないことなのだと確信しました」
「え?」
彼女がズバリと言い切った言葉に、二人の部下が拍手で称え、それ!それ!と当事者の僕を置いてはしゃぎ始めた。
こうなると長い。
「私達が和毅さんに名前で呼んでもいいか聞いた時和毅さんは悩んでましたけど」
「許可したのは部長だもんねぇ〜?」
「『別にいいんじゃない?お好きにどうぞ』って余裕見せてたよねー」
一人で言う台詞を三人で言うなんて、どれだけ仲がいいんだろ……
僕のマネを二人に絶賛され、得意気な彼女を見て、僕は頬杖をつくとともに、意図せずため息を零した。
「最初はね、別にいいと思ってたよ? でも、実際目の当たりにすると凄く嫌だったんだよね……だからといって今更、和毅には言えないし……」
僕達の関係を知っている彼女達だからなのか、長年、僕の部下でいてくれてる安心からなのか、心の中で溜まっていたモノが発散されていき、気づいた時には、彼女達に囲まれていた。
「部長ぉ〜とっても可愛いですぅ〜」
「その気持ち凄くわかります」
「部長!ここは私達に任せてください!」
恋愛事になると、率先して動く彼女の手が僕の手を包み、鼻息荒く大船に乗ったつもりで! と言われたが、今回ばかりは、彼女達に甘えるのをやめて自分で解決をしようと首を振る。
「大丈夫、今回は自分で解決するからありがとう」
和毅なら大丈夫と信じて、彼女達の心配をなくそうと優しく笑ってみせたのだが、事態は思わぬ方向へと舵を切るのだった。
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