夢乃女

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 若い頃、俺は一般的な日本人が好むようにかわいいタイプが好きだったが、早乙女愛の魅力に溺れてからは、それまで好きだったアイドルや女優がみんな芋に思えてアメリカ人が好むように大人の色気を持ったイッツクールな美人が好きになった。しかし、どうもその手の女がいなくて、そもそも「かわいい」を売りにしたアイドル文化がいけないのであって、その所為で大人の色気を持ったイッツクールな美人がこの国では生まれよう筈がなくなった。おまけに多人数にグループ化してアイドルとして一人一人のクオリティが落ちた。あと気に入らない点と言えば、寄せブラや胸パッドで大きさを誤魔化すのを良しとしていることだ。  早乙女愛のロケットおっぱいを賞玩する画家たる俺の目には浅はかな真似にしか映らず、見え透いたことだが、それは兎も角、きゃぴきゃぴしていたりへらへらしていたりぶりぶりしていたりするかわいいタイプの女じゃなくて大人の色気を持ったイッツクールな美人と出会えないものかな。最早ないものねだりか・・・と50になんなんとする徳永は、今日も今日とて思うのであった。  而して到頭50歳になった日の夕暮れ前、徳永は散歩しながら物思いに耽っていた。  小学6年の時だったなあ。早乙女愛の存在を知ったのは・・・あの頃、俺は親父の部屋にこっそり忍び入ってエロ本を探したもんだが、週刊誌に早乙女愛のヌード写真が載っているのを見つけた時の衝撃と言ったら凄かったなあ。で、うわあ!すげえボイン!って感じ入ったものだ。顔も殊に女猫の広告に映ってるのを見ると、子供心にもすげえ美人だと思ったものだ。でも、ポルノ女優なのかと勘違いしたし、あんまり大人な感じがして親しみが湧かなかったからか、ま、子供だから良さが分からなかったのだろう、アイドル歌手の方が好きなのに変わりはなかった。その趣向は30歳になるまで変わらなかった。ところがその頃からインターネットを始めるようになってレンタルビデオ店に行って恥ずかしい思いをしながら借りることなくアダルトビデオが見れるようになって矢張り人間として軽蔑に値するからAV女優に何か物足りないものを感じるやら嫌気が差すやらでビジュアルだけでなく人間性も求めた結果、そうだと思って早乙女愛を検索したところ、これだ!と一気に心を奪われたのだ。こんなシャープでシュッとした顔立ち、それでいて額や鼻の頭や顎や頬が何とも円やかで鋭い中にも甘い色気がある、その大人な感じ、それと乳房がロケット型に突き出ていて整っていて大きくて刺激的で乳輪も大きくて刺激的、この顔とおっぱいの高次元での両立。これは中々ない、と言うか、正に天は二物を与えたと言えるもので早乙女愛しか具現化した女はいないと思う。それに早乙女愛にしかない特別な魅力を感じる。危険な香りと言うのかな、男を堪らない気持ちにさせる。要するに魔性だな。女優魂も感じる。背も峰不二子に1センチ及ばないものの166センチあってほぼ八頭身でウェストも程よく括れてて脚もスラリと長く綺麗。ほんとイッツクールないい女。今見ても最高。中学生の頃は松田聖子が好きだったが、大人になってからネットで水着姿の画像を見れるようになると、胸がぺったんこで幼児体系だと分かったから早乙女愛と比べ物にならないくらい駄目だと駄目出しせざるを得なくなった。僕と同世代のいい女と言えば、藤原紀香だが、早乙女愛と比べると、背が高すぎて肩幅が広くて悪い意味で逞しい感じがして、つまり、ごつい感じがして女子力が低いと思う。ヘアヌードブームの時に脱いで巨乳が話題を呼んだ高岡早紀にしても早乙女愛と比べると、骨走った感じがするし、色気も感じないし、顔の作りも見劣りする。今を時めく女優と言うと、新垣結衣だと思うが、早乙女愛と比べると、ボリュームがまるでなくて単なるほそっちょ、だから棒きれのように感じられ、スタイルが完全に劣るし、色気も感じられないし、子供っぽい。画家の目から見ると、描き甲斐がなく到底、早乙女愛の相手にならない。  但し、確かに今時は、胸が大きくてスタイルがいいのが増えたが、どうしても顔が伴わないのだ。少なくとも早乙女愛と比べると、インパクトがない、個性がない、締まりがない、人間味がない、大人っぽくない、かっこよくないと言える。基本的にどれものっぺりしていて柔らかい物ばかり食べているから下顎が発達しておらず出っ歯で顎がとんがっている。兎に角、これだっていうのがいないのだ。何たって顔が気に入らないと、話にならないのだ。早乙女愛みたいな美人で色っぽい大人のタイプじゃなくても可愛いタイプでもいいんだが、どうもここ10年以上これだっていうのが出て来ない所を見ると、基本的に最近の流行の顔が気に入らないのだな。あーあとすっかり諦めていると、後方から大排気量独特のけたたましいバイクの音が聞こえて来た。そして徳永の横にブルンブルンと大音を響かせながら停まった。 「うっひょー!むっちゃかっけえ!超セクシー!すげえ美人!」  ヘルメットのシールドを上げ、ライダースーツに身を包んだ、その姿に徳永は心の中で、ときめき捲って唸ったのである。 「あの、いきなりお尋ねしますが、ご近所の方ですか?」  声も甘く心が蕩けそうになりながら徳永は、ええと答えた。 「では○○ビルは御存知?」 「ええ」 「では道を教えてくれませんか?」  徳永はその道順を半端でなく興奮して胸を躍らせながら懇切丁寧に教えてやった。 「ありがとうございます。お陰で助かりました」 「こちらこそあなたのような美人と話させてもらってありがとうございます、お陰で助かりましたと言っておきますよ。なんせ今日、僕の誕生日だからありがたい限りです」 「そうですか、それはおめでとうございます」 「はぁ、どうも恐縮です。全く感謝感激雨霰」 「ふふふ、そんなに喜んでもらって私も嬉しいです。では、急いでますのでさようなら」 「あ、ああ、さようなら・・・」頓にバイクと共に颯爽と去る彼女を見送る徳永は、「嗚呼、宛ら実写版峰不二子を演じる早乙女愛といったところか、全く有難いものを拝めたものだ」と感無量になるのだった。が、そう言えばと徳永は気づいてまさかっと思った。○○ビルと言えば、「夢乃女」というおっパブが3Fにある。徳永もよく世話になる所だ。  まさか夢乃女へ面接に・・・否、有り得る。あの胸の張り、あの美貌、あのスタイル。売れっ子になること間違いなしだ。しかし、あんな子が・・・嗚呼、いかん。確かにあの子を指名してあの子のおっぱいをもみもみちゅぱちゅぱ出来るのは最高だが、他の男どもにもそうされる上にもっといかがわしい猥りがわしいこともさせられてしまう。これはいかん。そうだ、口説いて俺の専属モデルにしようと徳永は思い立った。  その足で駆けだして信号待ちを歯がゆく思い、それ以外走り通しで思い立ってから30分後に○○ビルに到着した。で、駐車場に彼女のバイクがまだ停めてあったから、よし、ここで待つかと徳永は駐車場をぐるぐる歩き回りながら彼女を待つことにした。そして駐車場に来てから5分後にヘルメットを脱いだ状態で○○ビルから出て来て自分を認めるや、びっくりした彼女の美貌に自分もびっくりしながら近寄って言った。 「あの、失礼ですが、お金が欲しいなら僕のアトリエでモデルをやりませんか?」 「えっ」 「僕、こういうもんなんです」と徳永は言いながら名刺を差し出した。  彼女は受け取って目を通してから言った。 「画家さんでいらっしゃるの?」 「そうなんですよ。こう見えても売れてましてねえ、ですからモデル料を奮発出来ますし、3階の仕事と違って絵のモデルは至って清潔な仕事ですよ」 「あの、3階の仕事って?」と彼女は失笑しながら言った。「ひょっとして私があそこに面接に来たとでもお思いになったの?」 「失礼ながらそうですが、違うんですか?」 「違います。恥ずかしながら父があの店の店長をしてるんですが、いつも常備している抗てんかん薬を今日に限って忘れてしまったものですから家に父が薬を大至急持って来てくれと電話して来たんです。でも私、場所がよく分からずに家を飛び出してしまって・・・」 「あ、ああ、成程、そうだったんですか。これは大変失礼しました」 「いえ、いいんです。私を心配なさって態々ここまで足を運んでくださったんですもの。ふふ」と彼女はつい噴き出してしまった。それを見て徳永は気まずいやら恥ずかしいやら残念やらで困ったような鼻白んだような顔になってしまった。  その気色にも可笑しかったと見えて彼女は笑みを漏らし続けたが、決して意地悪な感じではなく好意的なものだった。それがまた徳永の目に魅力的に映った。  彼女の話では薬で落ち着くまで見守っていたとのことだった。  結局、感じの良い儘、エンジンをかけ、ヘッドライトを点けると、丁度夕陽の見える方へ向かって赤い波を蹴るようにバイクで走り去って行った。  彼女を見送った後、徳永は彼女と話している間、まるで夢の中にいるようだった、それにしてもおっパブの父と母との間にあんなに人が出来た而もあんなにいい女が出来るとは…正しく夢乃女だと思い、尋常でなく絵心が動かされるのであった。        
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