sept

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 慣れない刺激的な口付けの連続に、烈己は時折苦しそうな吐息を漏らす。  胸の尖りを指で掻かれて烈己の腰がびくりと跳ねた。無性に恥ずかしくなって、拒絶の言葉を紡ぎかけた唇は、再び与えられた刺激で別の音を発した。 「やぁっ……」  幼い子供のような高く掠れた声に、大澄は嬉しそうに口元を緩め、美味そうに烈己の胸を貪る。舌と唇で固くなった尖りを嬲り、吸い付いては軽く歯を立てる。烈己は与えられる初めての快感たちへ肩を震わせた。  下へ伸びた手がパジャマのズボンへ滑り込み、白い太腿の内側をなぞり尻へと這う。いつかの仕返しみたいに少し乱暴に尻を掴まれ、愛撫とは違うそれに気付いた烈己の眉が下がり、睨むようにして潤んだ瞳が視線を送る。 「こんなに可愛いお尻してたんだね」 「……貧相……で固いんだろ……」  意地悪な男の胸に、力無い手で作られた拳が当たる。 「そうでもなかった」 「馬鹿……ん……っ」  機嫌を取るみたいに唇を啄まれ、烈己はむっと眉根を寄せた。乱暴に尻を揉みしだかれ、反射的に上がった片足の隙間から双丘を割って後ろへと指が這う。 「……っ」  じれったそうに下着ごとズボンを引き下げられ、烈己の肌を隠すものは何一つなくなった。  心細そうに膝を折り曲げて、幼い自分の体を隠そうとする白い足を捕まえて大胆に開かせる。 「やっ……大澄さ……」  尻を撫でるだけでは済まなくなった意地悪な指が後ろへ伸びて来て、狭い場所を()じ開ける。  誰にも触れられたことのない場所を大澄に開かされ、ゆっくりと犯され、烈己は肩をビクビクと揺らして恥ずかしさとは裏腹に湿った吐息を漏らした。 「──痛い?」 「痛く……ない、けど……恥ずかしい……」  烈己は震える手で口元を覆い、覗いた瞳は我慢できずに溢れた涙で濡れていた。大澄はその右手をとって手の甲へ口付け、赤く火照った頬や震える唇へと優しく口付ける。  烈己は自ら左手を伸ばして大澄の肩へと捕まり、その中へ顔を(うず)める。  自身の中を這う長い指が動くたび、烈己は唇を噛んで声を飲み込んだ。 「……我慢強いのも考えもんだな」  赤く染まった耳たぶの縁を舌でなぞり、齧りながら大澄が小さく笑うが、烈己はもう何一つ反論出来ないらしく「んん」と、くぐもった音だけが漏れるだけだった。  最初は緊張しすぎて固く閉じていた場所も、繰り返される愛撫から緩やかに開かれはじめ、次第に大澄の指を透明な蜜が濡らしてゆく。滑りをよくした指が誘われるようにして、烈己の奥へと深く入り込んだ。  自分の体の中を出入りする熱が奥深くまで届き、抽送の角度が変わるたびに烈己は腰を浮かせ、濡れた唇からは熱を帯びた声が漏れはじめる。 「あっ!」  一際強い刺激が中を走り、瞳が大きく開いた。  大澄は烈己の一番感じる場所を何度も指の腹で押しながら開かれた唇を熱く深い口付けで塞ぐ。 「ふぁ……あっ……、だめ……あっ……」  体の中を迫り上がってくる初めての快感に烈己は耐えられず、羞恥する余裕のないまま腰を反らせて激しく乱れた。 「だめっ……あっ、そんな……しないでっ……あっ……、だめ、だめぇ……っ!」  肩に回された烈己の指がビクビクと痙攣して大澄の皮膚へと突き立てられる。それと同時に中にあった指が強く締め付けられて何度も戦慄いた。 「──あ……、はぁ……あ……っ」  ピンク色の胸が大きく上下して、上気して赤くなった頬へ涙が伝う。力の抜けた膝が大澄の身体へだらりと寄りかかった。  乱れた呼吸を整えながら、目を閉じて体の熱が下がるのを待つ烈己の足の間へと大澄が体ごと割って入る。 「っ、大澄さっ……」 「ごめん、もう何も聞けない──」  驚いて目を開いた烈己の鼓膜へ苦い声が届くのと同時に、体の奥へ熱がゆっくりと侵入してきた。 「あっ……、んんっ……」  指なんかとは比べ物にならないほどの圧迫感に、烈己は無意識に逃れようとシーツの上を這い上がる。  細いウエストを掴まれ、両足を開かされて烈己は恥ずかしさのあまりシーツへ顔を押し付ける。 「……烈己、こっち向いて」 「……んん……っ、無理……」 「キスしたい、お願い」  優しく耳元で囁かれ、頬へ口付けられ、涙で潤んだ瞳がうっすら開き、ゆっくりと大澄の方を見た。 「口開けて、烈己……」  お願いされるまま烈己は素直に口を開いて、大澄の深い口付けを受け入れた。口の中を自由に這い回る熱い舌で上顎をなぞられ、烈己は強張っていた体を少しずつ緩めていった。  烈己を傷付けないようにゆっくりと、体の奥を大澄の熱が入ってゆく。反射的に烈己は膝を曲げ、つま先を丸めた。 「おお、すみさ……ん」 「……うん?」 「……よかった……」 「なに……?」 「大澄……さんが、ちゃんと俺の……体で、興奮してくれて……」  烈己は少し不安そうに声を振わせ、笑みを浮かべた。 「烈己……」 「大澄さんが俺の、中にいる……の、すごい……。嬉しい……」 「……と、に……天然たらしをここで展開しないでくれ……」苦しげに大澄が喉を唸らせる。 「ん、大澄さん……? 中……」  烈己が次の言葉を継ぐよりも早く、大澄が深く腰を進め、それは短な悲鳴の音へと変わった。 「……っ、優しく……したかった、のに……、くそ……っ」  大澄は自分の意志の弱さへ怒りをぶつけながら、完全に我慢できなくった欲望の牙を烈己に向ける。  優しく奥まで貫いた場所を今度は強く何度も穿ち、浅い場所を掻き擦っては再び一気に奥まで貫いた。 「やっ、あっ、ああっ! 大澄さっ……ああっ、あっ」  烈己は何一つ抵抗できずに、大澄に激しく揺さぶられながら両手を肩へと回し、自分の中を食い散らかす狼の熱に溺れ、与えられる強い快感に耐えきれず何度も嬌声を上げた。  いつも余裕で、たまに意地悪で、本当は優しい(アルファ)──。そんな大澄が今は目の前のΩに夢中になり、雄の欲望を抑えることなくその体をただただ貪っている。その姿に烈己は人生で初めての優越感に近い幸福を覚えた。 「大澄さ……ん、すき、大好き……」  泣きながらうわ言のように繰り返される甘い声に、大澄はすっかり酔いしれていた。お陰で大した自制もできず、目の前のΩの深い場所を何度も何度も犯して回った。気が付けば大人げもなく、体中へ独占欲の痕を残していた。 ──もういい、次目覚めた時は、煮るなり焼くなり好きにしてくれと、大澄は早々に理性を投げ捨てた。  ただ、今はもう、目の前の可愛くて愛しい生き物を髪一本、爪の先まで残らず自分のものにしたい一心だった。  大澄は自分の中にあった、自分ですら知らなかった雄の本性に慄き、形容し難い感情の強さに背筋が震えた。 ──ずっとこうなることから逃げていた。  誰かを強く愛して、誰かに心のすべてを奪われ、自分を失うことを何よりも恐れた。  兄のようにはなりたくなかった──。  人を愛することは、自分を失うことだと思っていたから──。 ……嗚呼、なのに。 「大澄さん……、大澄さん……」  泣きながら自分を名を呼ぶこの命が誰よりも愛しい。  この感情を止められてしまったら、それこそが死を意味する気すらしてくるほどに──  誰かを愛するから失うのではなくて、誰かを愛することを奪われた時、人はその時本当に死ぬのだと、大澄はようやく初めて理解した。 「烈己、好きだよ……」 ──俺の運命の(オメガ)……。
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