不器用な愛(皇帝の逆位置)

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不器用な愛(皇帝の逆位置)

不器用な愛(皇帝の逆位置) 「下僕よ、下僕はいるか!」 「あーはいはいただいまー!」  私を下僕呼ばわりするこの失礼極まりない人物が、偉大なる父の弟だということに、毎度ながら驚きを隠せないでいる。  彼の名は『皇帝』の逆位置、父として慕っている正位置の弟で、主な意味は『横暴・権力の乱用・独裁的』など。性格も非常に短期で、気に入らないことがあると途端に怒り出して暴れ、使者達に迷惑をかける人物だ。 「遅い、呼んでから何秒かければ気が済むのだ!」 「たった三秒しか経ってないでしょうが……それくらい待ちなさいよ!」 「口答えをするというのか、面白い……ならば!」 「はいはい私が悪かったから、要件をどうぞ王様!」  言いたいことは沢山あるが、言ったところで話の通じる人では無いことは把握済みだ。下手に動くよりも大人しくしていた方が事なきを得られる。  それに、彼が私を呼び出した理由はひとつしかない。それさえ解決してあげれば、あとは解放されるのだから。 「要件だと、決まっているだろう。我が愛する妻へのプレゼントの案を言え!」 「そうだろうと思って、色々聞き出しておきましたよ」  彼が私を呼び出した理由、それは彼の妻である女王様こと、『女帝』の逆位置さんへ渡すプレゼントのアイデアを聞きたいからだ。彼は女王様の事を深く愛しており、彼女が喜ぶ事は全てすると固く決めているらしい。  然しながら、女王様の性格上ベタベタされるのが嫌いなので彼からの求愛を何時も鬱陶しいという理由で受け付けず、一方通行になっているのだ。それでも彼女を愛してやまない彼は、事ある事に私を使って彼女が欲しがっているものなどを聞き出し、少しでも喜んで貰おうとしているのだった。 「でもさ、やっぱり女王様に直接渡さないと、意味が無いと思うよ? 部屋にポンと置いておくだけじゃ、誰からの贈り物なのか分からないし、王様の想いが伝わらないままになるじゃない。せめて置き手紙を添えるとかしないと……」 「何を言う、それでは妻に手紙を読むという手間をかけることになるでは無いか! 手間を妻にさせるくらいなら、分からない方が良い! そのような事も分からぬとは……下僕として恥ずかしいと思わないのか!」 「下僕呼ばわりされる方がよっぽど恥ずかしいわよ! 本当に不器用なんだから……」  彼なりに一生懸命になっているのが分かるからこそ、どうにかして女王様に伝わって欲しいと思うのだが、お互いに一筋縄ではいかないのが現状だ。今後の二人の愛の行く末はどうなっていくのだろうかと、本気で心配になるのだった。
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