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序
ヘビイチゴの茂る境界の地を、スモモは兄、タマモに手を引かれ、歩んでいる――。彼方では、ホオジロが、激しく鳴いていた。
「ホオジロめ、勘づいたか。スモモ、急いで」
つと、眉をしかめ、空を見上げた兄――。はずみで、腰まで垂れる銀色の髪が、スモモの頬に触れた。
くすぐったさと、常に温和な兄が見せる厳しさに、スモモは戸惑った。
「兄様?」
仰ぎ見る兄の横顔は、どこか、こわ張っている。
「……春鳥は、お喋りだからね。父上に、告げ口されては……」
言い含み、兄はスモモの手をぐっと握った。
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