一章「一」

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一章「一」

日が照りつける中、景俊(けいしゅん)は馬に揺られ石高道を進んでいる。 里はずれの峠道。自分以外に人の姿などあるはずもなく、見えるものといえば、広がる蒼穹と輝く太陽ただそれだけ――。 都住まいの長い彼に、このでこぼこ野道は耐えられるものではなかった。当然、馬上でのびきっている。 「ああ、暑いなあ。都はこれほどでもないのに。まったく、母上の強引さには参るよ」 景俊は、一人ごちた。
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