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土曜日、洗濯を済ませてから信久との待ち合わせ場所に向かう。今日はミニシアターのある駅まで出るため、電車の中で待ち合わせをする。
デートじゃないし、いつも通りでいいよね。そう思ってボーイズデニムにブルーのふんわりブラウスを合わせた。
『これから出る急行に乗るね』
駅に着いた徳香は信久にメッセージを送ってから、先頭車両乗り込む。こういう時、同じ路線って便利だな。
それからすぐに返事が返ってくる。
『わかった』
あっさりしてるけど、友達とのメールはこれくらいがちょうどいい。彼氏なら物足りないかもしれないけど。
電車が信久の待つ駅のホールに止まりドアが開くと、デニムにTシャツを合わせた信久が乗ってくる。
徳香は自分の服と見比べて、思わず吹き出すした。なんだか傾向が似てる気がする。
「何?」
「別に。ただ服が被ったなと思っただけ」
「あぁ、本当だ。俺たちって、いろいろ似た者同士なのかも」
「確かにそうかもしれないね。一緒にいてこんなに楽で楽しい人、信久が初めてだもん」
「うん、俺もそう思う」
二人は顔を見合わせて笑い合った。
* * * *
映画館は特別混んでいるわけでもなく、二人は一番後ろの席に並んで座る。
「なんか不思議。誰かと一緒に映画を観るのって苦手だったはずなのに、信久とは平気なんだよね」
「それは俺も。お互い干渉しないからじゃない?」
「あと、信久って私の意見を否定しないよね」
「映画を観た後の感想ってこと? まぁ感じ方はそれぞれだし、俺自身、結構徳香の意見と同じことが多いから」
「そうなの? 知らなかった」
そうこうしている間に、始まりのブザーが鳴る。二人はスクリーンの方を向くと、すぐに一人の世界に入り込んだ。
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