越えられない恋愛境界線

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 徳香はどうしていいかわからなかった。信久を受け入れるべきなのか、このまま見送るべきなのか……ただどちらを選んだとしても、信久が自分の前からいなくなることだけは変わらない。  いつもそばにいてくれて、私のことをわかってくれて、助けてくれた。一緒にいて楽しくて、安心出来る人。こんな人、これから先出会えるかわからない……。 「ま、待って!」  徳香は走り出し、信久の背中に抱きつく。 「行かないでよ……!」 「ごめん……」 「もう無理なの……? ただの友達には戻れないの……?」 「うん……」  今まで私の言うことは受け入れてくれた信久が、こんなに揺るがないなんて……もう諦めるしかないんだ。 「……わかった……」  そう言ってから、徳香は信久の顔を引き寄せると唇を重ねる。 「今晩だけ……今晩だけだから……信久の恋人になる……」  信久は目を見開いて固まった。それから不安そうな顔になり、申し訳なさそうに下を向く。 「……本当にいいの?」 「そんなのわかんないよ……。でも……このままさよならはしたくないんだもん……どうしようもないじゃない……!」  再び彼の腕に包まれ、徳香は溶けるような息を吐く。  リハビリしてたのは私も一緒だったんだ……。だって信久の腕の中が全然嫌じゃないんだもの。きっと彼の匂いや感触に、少しずつ慣らされていたのかもしれない。 「徳香……キスしてもいい?」  徳香が恥ずかしそうに頷くと、信久に唇を塞がれる。  おかしいよ……私どうして嫌じゃないのかな……。  久しぶりのキスに酔いながら、徳香はうっとりと目を閉じた。
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