知らなかった彼のこと

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「小野寺さんのその感じだと、断ったか返事を保留にしているかのどちらかかな?」 「……今はちょっと、いろいろ微妙な感じです……」 「そっか……なんか悩んでるみたいだね……」 「でも……その……どうして信久が私に告白したって思われたんですか?」  徳香が問いかけると、杏は少し考え込んでから大きく頷いた。 「まぁ話しちゃってもいいかな。もう告白したみたいだし」 「……?」 「松重くんがいつから小野寺さんのことを好きだったか知ってる?」 「いえ……というか、彼はずっと長崎さんのことが好きだって思ってたので……」 「私? あはは! そういえば私のことを隠れ蓑に使ってるって言ってた!」  何のことかわからない徳香は、眉をひそめ首を傾げた。 「あぁ、ごめんね! 松重くんにはね、随分前に『好きだった』って言われたよ。過去形の告白。今は他に好きな人がいるんだって教えてくれたの」 「えっ……そんなこと初めて聞きました」 「そうだね、小野寺さんに好きな人がいるから、わざと隠してたんだよ。だって好きだって言ってもフラれるのはわかってるし、それなら友達としてそばにいて、いつかタイミングを見て言うつもりだったんじゃないかな」 「….あの……長崎さんに告白したのっていつ頃だったんですか?」 「確か……あぁ、そうそう。私が小野寺さんにお願いして、新体操を見せてもらったじゃない? あの頃だったはず。だって『ギャップ萌えした』って言ってたもの」 「そ、そんな……! あれって夏でしたよ。そんな前から……?」  徳香は愕然とする。 「全然気付かなかった……信久ってばわかりにくい……」 「でも彼なりにアプローチしてたらしいよ。全然気付いてもらえないって嘆いてたけど。そういう行動なかった? 例えば手を繋いだり、壁ドンとかバックハグとか」 「……ありましたね、リハビリと称したお触りが」 「でしょ? 確かに松重くんはわかりにくいけど、小野寺さんもちょっと鈍感だったりする?」  確かに否定出来ない。だって言われてみれば、意味のある行動だと思えたから。 「そうかもしれません……でも、ようやくちゃんと気付けたのに、信久と連絡が取れなくなっちゃって……メッセージを送っても全然既読にならないんです」 「そっか……でも松重くんのことだから、小野寺さんからのメッセージを見てはいると思うよ。だからさ、彼が拒否できないような内容のメッセージを送ってみたら?」 「……例えばどんな感じですか?」 「『○○で、あなたが来るまで待ってます』みたいな。きっと飛んで来ると思う」 「……来てくれるでしょうか?」 「絶対に大丈夫! 何てったって、彼は小野寺さんのことが大好きなんだよ。たぶんあなたが返事をくれるのを待ってるんだよ。もっと自信持って!」  杏の言葉に徳香は笑顔と共に涙が溢れる。少し前までライバルだと思っていたのに、こんなにも頼もしい人だと初めて知った。 「そうですね。じゃあ自信もってメッセージを送ってみます!」 「うん、頑張って!」  杏に励まされ、徳香は自分から信久に会いに行こうと心に決めた。
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