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境界線のその先は
今頃サークルで、俺が辞めたことを聞かされているかな……でもきっと徳香には関係のないことだし、すぐに俺のことも忘れて新しい恋を見つけるはず。
本当のことを言えば、徳香の気持ちが変わって連絡が来る……そんなことを望んでいた。だけど彼女から届くメッセージは、当たり障りのないものばかり。俺の告白やあの夜の出来事には触れないようにしているとしか思えなかった。
それはきっと友達以上にはなれないという彼女からの拒絶だと感じていた。
もう無理なら、宣言通り消えるのが一番だ。これ以上彼女を思い続けるのは苦しかった。
駅に到着し、家に向かって歩き始めたその時だった。スマホにメッセージが届く音がする。なんとなくポケットから出して確認をすると、相手は徳香からだった。
いつもなら一行目の文章が映し出されるのだが、今回はどこかのサイトのURLが添付されている。これは開かないと見ることは不可能だった。
毎回メッセージを確認していないわけではなかった。ただ既読がつかないように読んでいたが、これは開かないと見ることが出来ない。
悩みながらも信久はメッセージを開き、URLをタップする。すると出てきたのは、二人が出会い、いつも一緒に観に行っていた映画館のホームページだった。
たったそれだけ。他にメッセージもない。信久は困惑した。
これはどういうことだろう….今からここに来いと言っている? いや待て。今はサークルの時間だし、こんなところにいるはずがない。
でも万が一いたらどうする? 彼女をずっと待たせることになってしまう。それでいいのか?
しかし徳香の真意がわからないのに、そこへ行く勇気が出なかった。
一度家の方に足を向ける。だが胸のつかえが取れない。
わかった……確認だけしに行こう。いないかもしれない……でもいるかもしれない。そうしたらこれを最後にすればいい。
信久は踵を返し、映画館のあるショッピングモールへと歩き出した。
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