境界線のその先は

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* * * *  杏と話してからすぐに、徳香はサークルの活動には参加せずに体育館を後にした。彼女の話によれば、経理は忙しい時期だし、今から連絡しても間に合うはずとのことだった。  電車に乗り、信久と出会った映画館のある駅で降りる。いるはずもないのに、人混みの中に信久の姿を探してしまう。  ショッピングモールに着くと、美しく輝くイルミネーションを見ながら、信久と手を繋いだ日のことを思い出しては切なくなった。  あの時は慰めてくれていると思っていた裏に、自分への愛情が隠れていたのだと気が付けば、嬉しさから心がくすぐったくなる。  徳香は立ち止まると、スマホを取り出し信久へのメッセージを送信する。文章は何もつけずに、映画館のURLだけを添付した。信久が余計な感情を抱かないようにしたかったのだ。  きっと信久のことだから、画面に映し出された文章くらいは読んでいるはず。だから彼が気になって画面を開くことだけを願った。  すると徳香の願いが届いたかのように既読がついた。思わず徳香はガッツポーズをする。  来てくれるかもしれない。信久に会えるかもしれない……。  はやる気持ちを抑え、徳香は映画館へと急ぐ。エレベーターを待てずにエスカレーターに乗り、映画館の入り口の外に立つと、大きく深呼吸をした。  メッセージを読んだのは会社かもしれない。それなら時間はかかる。彼が来るという確信はなくても、待っていたかった。  おかしいな。告白されたのは私の方なのに、まるで私が信久に会いたくて仕方ないみたいじゃない。  でも、きっと恋をするってこういうことなのかな……。相手の言動に一喜一憂してしまう感じ。だとしたら、私はちゃんと信久に恋をしてる。  あなたに気持ちを伝えるから……だから早く来て欲しいの。
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