境界線のその先は

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 思わず信久は徳香の体を力強く抱きしめる。 「……徳香に拒否されたらと思うと怖くなって……だから逃げた……」 「うん……怖いのはわかったけど、私はどうしたらいいわけ? 置いてけぼりをくらっちゃったのよ」  徳香は信久の背中を優しく撫でてから、顔を上げて彼の顔を見つめた。 「ねぇ信久。ちゃんと言って欲しい。そうしたら私も返事をするから……。大丈夫、安心して。信久が怖がるようなことは何も起きないって約束する。むしろこれはケジメよ、ケジメ」  俺が怖がることは起きない? 信久は戸惑いながらも、徳香の笑顔と言葉を信じてゆっくり口を開く。 「徳香が好きなんだ……俺と付き合ってくれますか……?」  すると徳香はにっこり笑ったかと思うと、背伸びをして信久にキスをした。信久の驚いたように目を見張る。 「私も信久が大好きだよ」 「……本当に?」 「本当。信久が気付かせてくれたんだよ? あの……体を繋げて良かったなって思うの。だからね信久、私の中の壁を越えてくれてありがとう」  徳香にキスをしかけて、ここが外であることを思い出す。時間的に人は少ないが、イチャイチャするような場所ではない。 「あのさ、徳香。これからうちに来ない……? あっ、徳香の家でもいい! とにかく二人きりになりたいんだ」 「あっ、そういえば信久の家って行ったことなかったね。ここから近いんだっけ?」 「うん、歩いてすぐ」 「じゃあ信久の家にしよう。でもその前にお腹すいちゃった。何か食べていかない?」 「……俺は徳香がいい……」 「……信久ってそんなキャラだったっけ? でもね、腹が減っては戦は出来ないでしょ?」  徳香の言葉に、信久は嬉しそうに笑う。そんな表情を見たのが初めてだった徳香は、新しい発見に心が躍った。  この人、こんな可愛い顔も出来るんだ……。 「明日は休みだしね」 「そうそう」  二人はお互いの顔を見合って思わず吹き出す。それからフードコートを目指して歩き出した。
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