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目を開けると、額に汗をかいて、苦しそうに呼吸をしている信久が目に入る。この人のことがこんなに愛おしいって思えるなんて……。
徳香は信久の首に手を回し、彼をグッと引き寄せると、彼の頭を抱きしめて耳元で囁く。
「……信久ともう少し繋がっていたいな……」
「……もう徳香ってば……俺のことからかってる? あざと過ぎだよ……」
「本音だってば。それに……信久にしかしないから安心してね」
「うん、そうして欲しいです」
信久のキスに応えながら、ふと信久が消えてしまった朝のことを思い出す。一度もこちらを振り返ることなく去っていった背中。そしてもう二人の関係が戻らないと悟った時の絶望感。
だけどこうして、二人の関係は形を変えて戻ってきた。彼は私の大切な人……一番愛しい人だとようやく気付いたの。
「信久……朝になっても、ちゃんとそばにいてね」
「もちろん。っていうかここは俺の部屋だしね」
「うん……そうなんだけどね……。この間の朝、隣に信久がいなくて本当に寂しかったの……窓から信久の背中が遠ざかるのが見えて……涙が止まらなかった……」
信久は驚いたように目を見開いた。
「あの時……起きてたの……?」
徳香は頷く。
「そっか……ごめん。でもあの時にそういう気持ちになってくれたんだ……なんか嬉しいな」
信久が徳香の耳を舌で舐っていくと、徳香は熱い吐息と共に甘い声を漏らす。
「じゃあ寝ないで朝まで繋がっていようか?」
「……いいけど、私たぶん途中で寝ちゃうかも」
徳香が笑い出したため、信久はうめき声を上げながらベッドに倒れ込む。
「お、お願いだから動かないで……」
「あはは。ごめんね」
ベッドに仰向けで寝転がった信久は、柔らかな笑顔を浮かべて両手を広げる。徳香はその仕草に胸がキュンとし、彼の腕の中に飛び込んだ。
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