Triangle-takuma-

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「オメガってね、嘘つきなんだと思う。平気で嘘の言葉を並べ、表情を作り、アルファを騙すんだ。全ての頂点に立っていると思っているアルファをね。あの時も、真琴は僕に嘘をつき、そして僕はそれにまんまと騙された」 そう言って当麻は一瞬眉間に皺を寄せる。 「だけど、オメガにも一つだけ嘘をつけない物がある。それは『思い』。顔も言葉もその声音も見事に演じきっても、その思いまでは誤魔化せない。アルファとオメガって、なんとなくだけど相手の気持ちが分かるだろ?香りに含まれてるフェロモンを感じるように。相手の思いも伝わってくる。あの時だって、きっと真琴の思いも感じれたはずなんだ。だけど僕は、その時の真琴の言葉が衝撃すぎて、それを感じることが出来なかった」 確かに、オメガの気持ちが分かる。喜んでるとか、怒ってるとか、緊張や嫌悪、愛情。香りを感じるように、オメガの思いも何となく分かる。 「後になって思うんだ。あの時、真琴の思いはどうだったのだろう?って。もしかしたら、僕への気持ちがまだあったかもしれない。そしたら、僕達は違う未来に向かっていたかもしれない、てね」 いつも自然に感じていることだから、意識しない限りあとで思い返そうと思っても無理なのだろう。 「その後悔があったせいか、僕は前より相手の気持ちを感じるようになったんだ。だから会社でも気遣いが出来る男って、評判だろ?」 最後はおどけてそう言う当麻。 確かに社内での当麻の評判はいいし、密かにかなりもてている。 「拓真に連れていってもらって入った真琴の部屋で、発情期の強烈なフェロモンの中に真琴の思いを感じたよ。それは僕を求めてた。発情期のオメガだし、アルファを求めるのは当たり前なんだけど、真琴は僕を求めてるって思ったんだ」 あの時はすぐにドアを閉めたからオレには全く分からなかったが、あのフェロモンの中にも思いがあった? 「都合のいい思い込みかもしれないけど、真琴は僕を求めてる。そう思って入った寝室でベッドに沈む真琴は確かに、僕の名を呼んだんだ。僕の香りを感じて、僕の名を呼んだ真琴から僕への愛情を感じた。そして僕は、もう自分を止められなかった」 本能の赴くままに真琴を組み敷き、うなじを噛んだ。 「噛んだ瞬間、身体中のありとあらゆるものが真琴と繋がったような気がした。そして流れてくる真琴の思い。それは僕への思いでいっぱいで、他に何も無かった。真琴の心は僕への思いしか無かったんだ。だから後悔しない。真琴を噛んだこと。それどころか愛しさが増し、それだけじゃ足りないと思った」 だから避妊をしなかった。真琴に自分の子を宿したかったから。 「怖くはないよ。今回はちゃんと真琴の思いを感じることが出来たし、番になってそれが確信に変わったから。だけど、まだ真琴は僕を拒否するだろうね。心とは反対に。それは僕がまだ真琴に相応しい状況じゃないからだ。だから僕はちゃんとしなきゃいけない。真琴を苦しめないように」 そう言ってお茶を一口飲むと、伝票を持って立ち上がる。 「もうのんびりしてられない。急いで片付けてくるよ。急だけどこの後半休貰って明日休むね。それで決着つけてくる」 そしてそのまま行ってしまった。 伝票を持っていったのは、急な休みでかかる迷惑料のつもりだろうか?
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