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心はオレを好きだと言っているのに、ノアはなおもオレを拒絶する。
「ノア」
「僕はタクマに相応しくありません」
そう言ってオレから一歩後ろに下がると、ノアはふわりと笑った。その目は涙で濡れているが、あの時と同じ笑顔だ。オレの胸が締め付けられる。
「僕は生まれた時から母しかいなくて、貧しくて、いつもお腹を空かせた子供でした。それでも母が一生懸命僕を育ててくれて、やっとハイスクールは出れたけど、それだけです」
ノアの生い立ちは知らない。オレと出会う少し前に母親が亡くなったと聞いていたが、それ以上は何も聞いていなかった。
「僕は家族もお金も学歴もない、何も無いただのオメガです。でもタクマは違う。いい大学を出て大きな会社に勤めてお金持ちで、そして力の強いアルファです。何も持たない僕なんかより、もっと相応しいオメガがいるはずです」
もうその目に涙はなかった。
真っ直ぐにオレの目を見て、しっかりした口調でそう言うノア。けれど思いはオレへの愛でいっぱいだった。
あの時、もしオレがノアの心を感じ取れていたら、きっと今と同じ思いを感じただろう。だけどオレはそれを受け取り損ねた挙句、その作られた表面しか見ずにノアを誤解した。これがオメガの処世術だと。
本当のノアはそんなこと微塵も考えず、オレのことだけを考えてくれていたのに・・・。
オレのために嘘をついて身を引き、そして、こんなにもぼろぼろになってしまったノア。今だって全然平気な顔をして、オレを突き放そうとしている。
愛しさが込み上げてくる。
オレはノアを抱きしめ、また抵抗しようとするその身体を今度は支配力で封じる。
「愛してる」
さらに腕に力を込める。
「ダメです・・・」
こんなにも心がオレを求めているというのに、ノアはなおも支配から逃れようともがく。だからオレはさらにアルファの力でノアを縛る。
オレは動けないノアを横に抱き上げ、奥の寝室へと入る。古くてもちゃんとオメガ用の住居のようで、そこにも鍵が付いている。オレはそれもきっちり閉め、ノアをベッドに寝かせるとその上にのしかかった。
「タクマ・・・」
またなにか言おうとするノアの口をオレは手で塞ぐと、オレはじっとノアの目を見る。
「もう聞かないって言ったろ?」
そして口を覆っていた手を頬にずらして撫でると、オレは顔を近づける。
「愛してる」
そう囁きながら唇をそっと合わせる。
「どこの誰であろうとどんな過去があろうと、オレはノアを愛してるんだ。オレはノアしかダメなんだ。ノアしかいらない」
ノアの身体が小さく震え出す。
「だからもう離さない」
そしてその震える唇に再びキスをする。すると今まで入っていた力が抜け、ノアはオレに身を委ねる。
あとはもう、言葉はいらなかった。
合わせた唇は徐々に深まり、開かれたその隙間から舌を差し入れる。
もう何度もしたノアとの口付け。ノアのいい所は全て知っている。
ノアの口内は熱く、舌を這わす度に身体がビクンビクンと震える。その身体を宥めるように優しく撫でながら、オレはノアの薄い胸へも手を這わす。そこはシャツの上からでも分かるほど健気に固く立ち上がり、 それをグリっと潰すように指で撫でると、身体はさらにに跳ね上がった。
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