5.君が欲しい(月見薫視点)

5/11
前へ
/77ページ
次へ
家に帰りつくと部屋に入ったタイミングで着信が来た。名前を確認すると貴臣からで、休日に電話が来るなんて珍しいと思いつつすぐに電話に出る。 「はい、月見です。」 『貴臣だけど、至急会社に来てくれないか?』 「問題でもあったの?」 『新人が取引先でやらかしたらしくて、お前そこのお偉いさんに気に入られてるから話付けてきてほしいんだよ。』 「…休日手当だしてよね。」 『助かる!じゃあ、待ってるから。』 そういって慌ただしく切られた通話画面を見つめてため息をつく。 なかなか取れない休日をこんな形で潰されてしまうのは不服だけれど、上司命令なら仕方ないと気持ちを切り替えてスーツに着替える。 だらしなく見えない程度に髪を纏めて俺はすぐに家を出た。 会社に着くと買ったばかりの花を持ってオフィスへと急ぐ。 辿り着くと丁度貴臣が顔を出して、今から先方に謝りに行くと言われた。 花をオフィスに置いてから二人で駐車場へと向かう。 話を聞く限り新人の岡部君が商品の見積もりを間違えて伝えてしまったらしく後日それが発覚して先方と揉めているらしかった。 「なぜ新人を?あそこは大手の取引先なのでベテランが担当するはずでは?」 「あの新人君めちゃくちゃ営業成績良いから大丈夫だろうって高括ってたらしい。」 理由を聞いて思わず眉間にしわが寄る。 車に乗り込むとすぐに発信させて取引先の会社まで急いだ。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1235人が本棚に入れています
本棚に追加